国際忍者研究センター

三重大学では、伊賀地域の発展のために、
忍者の歴史や文化を研究し、その成果を発信しています。

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(学生通信)目利きの編について(院生三橋源一)

2018年12月13日

このところ12月だというのにおかしな天気が続いています。いや夏の猛暑のことを考えると今年は異常気象といえ、気象予報士も予想が当たらず苦労していることでしょう。しかし、優秀な気象予報士がいます。イネ先生です。…江戸時代の農書『伝七勧農記』には異常気象の時は稲はそれを予知して、根元を太くして背丈を伸ばさない。人間よりも天候を良く知っているのは道理である、と記載されているようです。

万川集海の目利きの編でも、特に田の浅深を見図る術で、非常に細かい記載がされています。陣の張り方や視察については軍記物を読めばだいたい把握できますが、このような田の肥疲などの詳細は武士では不可能でしょう。やはり在住の半農土豪のなせる観察眼だと思います。

自然環境の目利きに必要なのは、年間や数年を通じた地域の微細な変化を日々感じとることであることは自明の理であり、それはやはり農民、環境の変化を読み取って手を打たなければ、即飢えにつながる宿命を背負った人々が該当するのだと思います。

忍術書と各種農書が出版される時期は重なっているようなので、農書を単に農法の中で判断するのではなく、農民や土豪の生活の中で読み解き、そこに忍術との関連をさぐっていく機会があれば、と考えています。

このような意味で、思いついたときに半日程度山に籠って、自然云々言っている人々よりも、自宅のベランダでも年間通じて、一喜一憂しながら植物を育てた人の方がよっぽど自然の目利きの何たるかがわかるのではないかなぁと感じる日々この頃です。(院生三橋記)