国際忍者研究センター

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(学生通信)映画レビュー①「真田十勇士(2016年、監督:堤幸彦)」(院生 郷原匠)

2020年06月09日

 本日紹介する映画は、2016年に公開された「真田十勇士」です。2014年にヒットを記録した舞台「真田十勇士」を実写化した作品だそうで、監督は堤幸彦さん。有名な作品として、「20世紀少年」や「イニシエーションラブ」があります。

 プライムビデオにおける平均評価は★5中、★3です。まずまずの評価といえるでしょう。

 関ケ原の戦いから14年後の大阪冬の陣・夏の陣における、忍者集団「真田十勇士」の活躍を描いた時代劇・コメディー作品です。有名な武将、真田幸村(加藤雅也)に従ったことからその名が付きました。お調子者の猿飛佐助(中村勘九郎)、クールなイケメン霧隠才蔵(松阪桃李)、臆病者だけど意地っ張りな根津甚八(永山絢斗)など、メンバーそれぞれ個性あふれるキャラクター設定となっています。皆さん大好きくノ一も補助的ではありますが出てきます(名前は蛍、大島優子が演じた)。

 ちなみに真田幸村自身はこの映画の中で、男前の顔や体格を持ちながらもその中身は腰抜けで、これまでの幸運の数々によって名武将と讃えられてきた、といった設定になっています。真田十勇士メンバーの戦闘能力の高さを示すため、わざとそのようなキャラ設定にしたのかもしれませんが、「真田幸村は強い武将である」と思っていただけに、最初は少し違和感を覚えました。史実の真田幸村がどんな性格だったかは分かりませんが、この映画で描かれる真田幸村の性格と似ていたならば、また違った歴史の見方ができるかもしれません。

 印象的だったのは映画の冒頭部分、真田十勇士が結成される過程において、いきなりアニメ映像が流れたことです。実写映画であるのになぜこのような演出をしたのか、全く持って不明です。これについてはプライムビデオのレビューで、「お子ちゃま向け」、「???」といった酷評が多くされていました。私は個性的な演出で結構好きでしたが、大衆にウケるものではなかったのでしょう。しかしこの良い意味で奇をてらった感じの演出は、堤監督の才能の一つといえます。

 大阪冬の陣のシーンでは有名な「真田丸」(大阪城の南に作られた防御施設)も登場します。映画でも史実通りこの真田丸によって、真田十勇士は徳川軍を打ち破ることに成功しました。メンバーがそれぞれ協力して徳川軍を追い詰める様子は、見ていて炭酸ジュースを飲んだようにスカッとするものでした。

 大阪夏の陣の結果については皆さんもご承知の通り、豊臣秀頼軍は滅ぼされます。夏の陣における戦闘アクションにおいては忍者らしく、霧隠才蔵はマントのようなもので空を飛び、猿飛佐助は軽快なアクションで場を盛り上げます。徳川家康が異常に憎たらしく描かれているので、豊臣軍が負けると分かっていながらも心の中で十勇士を応援してしまいました。

 映画のエンディングでは、真田十勇士の何名かと徳川秀頼は生きており、大阪を脱出して琉球や東南アジアなどの世界各国を放浪したという設定になっています。どのようにして生き抜き脱出したのかについては映画をご覧ください。史実としてはあり得ないでしょうが、夢とロマンを思わせるような終わり方でした。

 全体的に娯楽映画としてはかなり面白い作品になっているのではないかと思います。皆さんもぜひご覧になってみて下さい。

 以上で今回のレビューを終わります。次回は「忍者狩り(2015年、監督:千葉誠治)」を紹介したいと思います!(院生 郷原記)