国際忍者研究センター

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(学生通信)映画レビュー㉑「NINJA THE MONSTER」<2015年、監督:落合賢>(院生 郷原匠)

2020年11月16日

 本日紹介する映画は、2015年に公開された「NINJA THE MONSTER」という映画です。監督の落合賢氏は、「パパとムスメの7日間」(2018年)や「太秦ライムライト」(2014年)などの作品で有名な方です。

 プライムビデオによる平均評価は、★5中、★2つ半であり、少し低めの印象を受けます。「ディーンさんがかっこいい」「大好きディーン様」といった主演のディーン・フジオカさんを褒める感想ばかりで、おそらくこの作品を観ている大半は、彼のファンであると思われます。酷評としては、「内容が薄い」「想像と違った」といったものがありました。

 世は江戸時代中期、忍びは危険な存在とみなされ、幕府は「忍者禁止令」を発布していました。その中で伝蔵(ディーン・フジオカ)は自らが忍びであることを隠しながら、長野藩に仕え、藩主の娘・幸姫(森川葵)の護衛役として務めを果たしていました。長野藩は財政窮乏に陥っており、そこで幸姫は、藩の救済のために、伝蔵を含めた護衛役数人と共に江戸へと向かうことになりました。しかしその道中、「モノノケ」と呼ばれるアメーバ状の謎の物体が幸姫一行を襲います。次々と殺されていく仲間達。しかし幸姫は何としてでも江戸に向かわなければなりません。伝蔵は「モノノケ」から幸姫を守り、無事江戸へとたどり着くことができるのでしょうか・・・。以上ストーリーのあらすじを紹介しました。「忍者禁止令」という謎の法令が出ていること、敵がアメーバ状のモノノケであることは、とてもユーモアがあり、非常に面白いと感じています。

 私はこの作品を観る前、「プレデター」(1987年)や「エイリアン」(2004年)、「遊星からの物体x」(1982年)などのように、グロ、ホラー要素を伴いながら、忍者が激しいアクションを交えてモンスターと戦うといった内容であると思い込んでいました。しかしいざ映画を観てみると、ほとんど戦闘シーンはなく、グロ、ホラー要素も皆無でありました。また映画の最後の方で、伝蔵がモノノケと戦うシーンがあるのですが、ここでも特にこれといったアクションはなく、伝蔵が終始モノノケにおびえているという謎のシーンがあるだけでした。ここまで想像と違った映画は初めてだったので、軽い衝撃を受けました。

 一体どういう目的で本作品が作られたのかどうかよく知りませんが、おそらくディーン・フジオカさんのファン層を狙った、一種のイメージビデオなのでしょう。忍者映画のカテゴリーに含められるかといえば、非常にきわどいところです。もう少し手裏剣や苦無などを用いて、派手なアクションシーンを入れてほしかったです。

 ちなみに一応言及しておきますが、江戸時代に「忍者禁止令」が発布された史実はありません。幕府に仕えた御庭番や伊賀・甲賀百人組、尾張藩に仕えた甲賀五人、鳥取藩に仕えた夜盗組など、幕府や各藩に忍びが仕えていたことはしっかりと歴史史料に残っています。しかし忍者がいない江戸時代を想像してみるのも面白いので、その分には、本作品はその世界観に浸ることができる最適な映画なのかもしれません。

 以上で今回のレビューを終わります。次回は「ニンジャ・アベンジャーズ」(2013年、監督:アイザック・フロレンティーン)をレビューしたいと思います! (院生 郷原記)