国際忍者研究センター

三重大学では、伊賀地域の発展のために、
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(エッセイ)おれたちが暁だ (吉丸雄哉)

2018年10月22日

私は、長崎県の片田舎にある青雲という私立中高一貫校の出身である。ちょっと変わった学校名だが、巨人の星に同名の高校がでてくるらしくて、すごく嬉しそうに「巨人の星に出てくる学校ですね」と言われることがある。巨人の星もよく知らないし「ああそうですか」ぐらいの返事しかできない。

先日、四日市市にある私立の暁高校(3年制コース)に出前授業で忍者の話をした。忍者関係で「暁」といえば、やはり『NARUTO -ナルト-』に出てきてナルトたちを苦しめる忍者組織の名前である。黒地に赤雲模様という衣裳が格好良く、敵ながら剛の者揃いである。コスプレマントが安く売られているそうで去年のハロウィーンでは渋谷で着た人がけっこういたそうである。普通の漫画なら主人公と強敵との間にタメが入って戦いそうなものだが、暁とナルトたちが余計なストーリーに脱線することなくすぐに激突するのが『NARUTO -ナルト-』の魅力である。先日の歌舞伎の『NARUTO -ナルト-』にも出てきて、時間の関係上あっさりしていたが、それでも割愛されず、立体のいたち・鬼鮫・デイダラ・サソリ・飛段・角都らが見られたのはファンにとっては嬉しい。

『NARUTO -ナルト-』において、敵にして格好のよい「暁」はそもそも革新派である。日本民主青年同盟の「あかつき行動隊」を私は連想するが、さすがにこれは偶合だろう。ナルトらが現体制維持の保守派というのが『NARUTO -ナルト-』では面白い。忍者漫画では横山光輝では影丸や赤影が体制派であるが、白土三平の忍術漫画では忍者が反体制派であることが多い。『NARUTO -ナルト-』のサスケも、もともとサスケというのは反徳川の猿飛佐助からきた名で、白土漫画にならえば、その名の作品のとおり階級闘争重視の主人公である。岸本斉史はそうしなかったが、もしサスケが主人公でナルトがライバルだったら、今の若者に同じぐらいの人気があったどうか。

さて、出前授業の冒頭に「暁」からは『NARUTO -ナルト-』の「暁」を連想するという話をしたかったものの、聞いているほうは「ああそうですか」と言わんばかりの薄い反応が予想できて、当日は星飛雄馬と青雲高校の話をして予防線を張った次第。反応はやっぱりという感じでした