国際忍者研究センター

三重大学では、伊賀地域の発展のために、
忍者の歴史や文化を研究し、その成果を発信しています。

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(学生通信)三重大学院の忍者・忍術学コースに通学しての総括①(院生 嵩丸)

2020年08月03日

 皆の衆こんにちは!院生3年の嵩丸です。

 このブログは授業の課題の一環で前期のみ書いているものなのですが、今年度の執筆分も早いもので、今回を含めて残り2回となりました。三重大学大学院の忍者・忍術学コースの様子をご紹介して、忍者学を志す若い人に少しでもイメージが湧いたら良いなと思い、一貫して大学院でやったことをメインに紹介してきました。3年間の長期履修でしたが、ちゃんと修士論文が書ければ今年で修了となるので、この3年間を振り返って忍者・忍術学コースに通学してみての感想を、2回に分けてまとめていきたいと思います。

 前半は忍者・忍術学コースで得られたことについてまとめていきます。

1.研究・調査方法スキル
まず通学してみて一番に身につけられてよかったと思う点は、歴史学や文学などの研究手法に則った調査方法のスキルが身についたことです。学部生時代は法学部で全く違う分野だったので、大学院に入ったばっかりのときは一体何をどの本から調べればよいのか、どこに何を問い合わせすればよいのかなど全く知りませんでした。ですが先生方のご指導で、研究のために必要な最低限の手法、史料調査のコツ、あたりの付け方など、独学だとなかなか身につかないようなスキルを、演習を通じて諸々御伝授いただけました。忍者のことについて調べよう、論文を書こうと思った際の「お作法」のようなものが身についたと思います。
普通だと歴史学とか考古学とか一つの研究手法を専門で行うと思いますが、忍者・忍術学コースのカリキュラムは、歴史学と文学の観点から忍者をあぶり出していくものなので、その2つの側面から学べたことは大変有意義でした。逆に言うと、複合的な研究手法を学ばなければならず、「忍者」という楽しそうな響きのみを期待して入学すると、少し難易度が高く大変な点もあると思います。ただ、これは今後自分で研究活動をしていく上でも、仕事においてなにか調べ物をする際にも大変役立つスキルだと感じています。

2.くずし字読解力
 そしてなんと言っても、忍術書や忍者の歴史を紐解いていく上で外せないのがくずし字です。ここについては高尾先生に徹底的に叩き込んでいただきましたので、まだまだスラスラと読めるわけではありませんが、入学当初に比べるとだいぶ読めるようになってきました。これまで博物館の展示などで古文書が出てきても「ふ〜ん」と素通りしていましたが、少しでも読めるようになると、当時その史料を書いた人の息遣いが感じられるようで、大変楽しめるようになります。これまで読めなかった忍術書なども少しわかるようになり、更に忍者を突き詰めていくための必須スキルをゲットできました。ただし、少しでも時間が空いてしまうとすぐ読み方を忘れてしまうので、継続的にくずし字に触れていかなければなりません。

3.実践による貴重な体験
 ここ数回のブログでも紹介しましたが、忍者の末裔宅への史料調査、展示の解題作成、兵糧丸の調理実験、忍術の稽古など様々な演習がありました。どれも普通に過ごしていたのでは体験できないことばかりで、大変刺激的なものです。ブログでは書きませんでしたが、高尾先生の授業では火打石で火起こし実験をしたり、吉丸先生の授業では和綴本を針と糸を使って綴じてみたり、たまに忍者のカードゲームで遊んだり(笑)していました。思い返すとどれも楽しくていい思い出ですね!

4.貴重資料へのアクセス(国際忍者研究センターとの連携)
 忍者に関する資料というのは、一般的なものであれば図書館や他大学への照会で閲覧・取り寄せをすることができますが、こと忍者達が書いていた文書(由緒書や忍術書)になってくると、どうしても個人蔵や非公開のものが多くなってきます。やはり忍者を研究する上で大変なのがこの貴重な資料へのアクセスの難易度の高さ。そうやすやすとお目当ての資料に辿り着けません。そのような中、先生方がこれまで積んできた研究成果や、国際忍者研究センターの精力的な地元伊賀や全国忍者調査など成果が十分にありますので、閲覧のために機関への取次をしていただいたり、調査された画像を閲覧させてもらったり、自分ではなかなか変えない本を見せてもらったりと、大変なご指導とご協力をいただけるのはかなり大きいです。学生の身分でなくなったとしても、国際忍者研究センターのお手伝いを無償でしますので、忍者資料の情報交換などはぜひさせてください!(この原稿をアップしている事務員・研究員の方に向けて(笑))

 三重大学大学院の忍者・忍術学コースだからこそ得られたものでいうと上記のとおりかと思いますが、ほかに久々に学生になってよかったことがありました。それは各種サービスの「学割」です(笑) 特にAdobe製品はサブスクリプションになって高額になってからというもの、本当に腹が立って仕方ないのですが、学割の割引額が大きすぎて大変助かりました。ほかにもAmazon PrimeやSpotify、Apple製品の購入、通学の新幹線代なども学割でだいぶ恩恵を受けましたので、この点だけでも一生学生やってたいな…と思ってしまいますね!

 本来は大学図書館の利用もメリットに挙げられるのでしょうが、自分は遠方のためほとんど国立国会図書館や東京都立図書館を使っていたため、あまり大学の図書館には恩恵は受けられませんでした。忍者・忍術学は非常にマニアックですが、遠方の人で大学院に行きたい人もいると思います。今後はコロナ禍の影響でリモート授業がもっと普及し、遠方の方も入学しやすくなる日が来ると思います。その場合は、学費はともかく施設利用料などは割引してもらいたいなと思う今日この頃です…。

 ということで、大学院で得られたこと、メリットなどを挙げていきました。次回が最終回になりますが、最後は一番気になる「大学院の忍者・忍術学コースが終わったあとの進路」について、自分が思うことを書いて終わりたいと思いますのでお楽しみに!(嵩丸記)

<どうでもいい追伸>
ちなみにですが、このブログはなぜかTwitterで文学通信さんにいつもシェアしていただいています。とても恥ずかしくもあり嬉しい複雑な気持ちですが、いつも書いた本人よりも早くシェアするので、文学通信の中の人はガチ忍者なのではないかと思っています。(文学通信さんのアカウント→https://twitter.com/BungakuReport)