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(大学院教育)仲の良いもの同士で二人ひと組になって(吉丸雄哉)
2018年08月02日
2012年に忍者研究を始めて、まだ2、3年ぐらいに、偉い地位の人から「三重大学に忍者の学部ができたらいいですね」と言われることが時折あった。「そうしたら、卒業試験は二人組にさせて生き残ったほうだけ、卒業にしないといけませんね」と答えることにしていたが、この冗談が何を言っているのかわかってくれた人はいなかったようだ。
2018年度より三重大学人文社会科学研究科大学院地域文化論専攻に忍者学コースができた。今年度前期の授業で、そういうやりとりがあったことを忍者学コースの大学院生らにふと漏らすと、さすがに元ネタを知っていたらしく「それだけは勘弁してください」と懇願された。
元ネタは映画化もされた有名な忍者漫画の冒頭にある趣向で、当事者に争いをさせることを知らせないまま仲の良いもの同士を組ませるのがミソなので、当事者に喋っている以上もちろん本気ではない。
研究者養成の世界を見てみると実質それと変わらないかもと思うときもある。私は恵まれていて、同級生や先輩・後輩に助けてもらいながら博士課程まで進むことができた。だが、大学によっては修士課程のうちに優劣をお互いに決めて、劣っているほうは博士課程に進まずに就職するのが慣習のところもある。先述の作品に限らず、フィクションにおける忍者の技芸伝達が現実の大学院教育に似ていると思うことしばしばで興味深い。(吉丸記)