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(学生通信)忍び働き以外も一挙手一投足に命懸け(院生三橋源一)
2019年02月06日
さて、忍術書を読んでいると一種、ピリッとした緊張感に包まれる感じを受けます。それは完全に命のやり取り前提の敵陣中に侵入して工作する行為、一挙手一投足に自分の命がかかっているのを感じるからだと思います。
しかし、農山村、特に山村に住んでいると同様のシチュエーションに出くわします。今のような真冬は山の管理には最適のシーズン。虫・雑草に邪魔されることなく、山作業ができるだけでなく、急こう配を登ったり、倒木や切り出した丸太を運ぶ際には、全身ビッショリになりますが、真冬の寒さが逆に心地よく感じるからでもあります。
しかし、注意が必要です。山村の民俗誌を参照していると山仕事での死亡事故は圧倒的に多いです。急こう配の足場の悪い中、人間より何倍も重く、長く、高いところから倒れてくる木に接触したり、山から降ろす際に巻き込まれて山下まで墜落する事例が昔から多くあります。
現在の山は荒れており、竹や木が折り重なって傾いています。先日私も山である竹を切ったら、連鎖して斜め後ろから別の杉の倒木がスライドして突進してきて危うく、巻き込まれそうな状況がありました。
木を伐りだす際に、一瞬後のことを予想しながら不安定な場所で力仕事をする。場合によっては一挙手一投足に自分の命がかかっている。
また、山に入っていると、鹿の獣道、イノシシが体をこすりつける泥場など見つけますが、季節によっては鹿の雄などが狂暴化しているので、糞の状況や行動する時間帯など考えながら、彼らを避けつつ作業することも重要です。
即ち、一瞬の動きに自らの命がかかっている、状況を的確に読み取り、且つ行動に移せる体力、器用さがないと事を為すことはできないのです。
このように山村の普段の作業で自然と、忍び働きの基礎となるような感覚が磨かれるのではないかと感じています。
ついでにいうと男の体というのは、何万年も前から雄たけびを上げ、大地を駆け回り、全力で獲物をねじ伏せるように、天然自然に育成されてきたもので、机の前で小さく縮こまって指先を動かすだけの為には作られてはいないのです。
たまには、呻きながら丸太を抱え上げ、崖下に叫び声を上げながら投げ落とす、この爽快感、機会があればぜひ味わって頂きたいものだと思います。