国際忍者研究センター

三重大学では、伊賀地域の発展のために、
忍者の歴史や文化を研究し、その成果を発信しています。

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(エッセイ)「アイム ア ニンジャ」、「ディス イズ ニンジャ」(酒井裕太)

2019年10月25日

 最近、『アップグレード』という映画を見てきました。監督が大ヒットしたホラー映画『ソウ』シリーズのリー・ワネル、製作がこちらも一部ではヒットした『ゲットアウト』のジェイソン・ブラムというタッグの作品という事に惹かれ、映画館まで足を運びました。
 この映画、SFとアクションとカンフーとホラーが入り混じった、B級なようでB級じゃない作風で、超端的に言えば究極のAIを神経に組み込まれた男が復讐のために大暴れする作品です。書いててやっぱりB級映画のようなあらすじですが、決してつまらなかったわけではありません。さて、そんな主人公が敵に襲い掛かった際、敵に「お前は何者だ?」と問われるのですが、主人公はなぜか「忍者だ」と答えます。すかさず体内のAIが「忍者ではありません」と淡々と否定します。
 観ていて、「なぜそこで忍者?」と思ったのですが、やはり欧米の、特に日本文化に興味のない層からすれば、すばしっこく動き回る超人=忍者なのでしょう。
 そういったイメージを悪しきものとするか、新しい一つの文化的イメージとするかの良し悪しは私には分かりませんが、インパクトを与えるという意味で大衆に忍者を用いるのは、私は嫌いではありません。
 最近は日本のあらゆる地域で、外国からの観光客向けに忍者が活躍していますが、格闘技界にも一人、忍者の名のもとに世界で活躍している選手がいます。
 猿田洋祐という総合格闘家のニックネームはそのまんま、「Ninja」です。日本最大の格闘技イベントだったPRIDEとK-1がすたれ、UFCの一人勝ち状態が続いていましたが、数年前からシンガポールのONEという団体が一気に勢力を拡大し、まるでアジアの経済成長にくっついているかのように次々と大会を成功させています。
 猿田選手は2019年1月、この団体のストロー級の王者となり、初の防衛戦では忍者コスチュームで入場するなどして、闘い以外でも世界中の観客を盛り上げていました。惜しくも現在は王者から陥落してしまいましたが、今月行われた日本大会では見事KO勝ちし、試合後には忍者ポーズ、勝利者インタビューでは「This is Ninja」と豪快に答えていました。
 今週末から始まる後期の「忍者忍術学講座」のテーマは「創造される忍者」ですが、まさに最新の忍者を創造中の猿田選手には今後の活躍に期待し、忍者の普及にも一役買っていただきたいなという思いで応援しております。(酒井記)