国際忍者研究センター

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(学生通信)映画レビュー⑥「RE:BORN リボーン」<2017年、監督:下村勇二>(院生 郷原匠)

2020年07月15日

本日紹介する映画は、2017年に公開された「RE:BORN リボーン」という映画です。少し前に流行った「家庭教師ヒットマンREBORN!」とは全く関係ありません。監督の下村勇二さんは過去にも「隠忍術~しのび~」シリーズ(2002、2003年)や「抜け忍」(2009年)といった忍者映画を多数撮られているそうですが、恥ずかしながら一度も見たことがありませんでした。主人公、敏郎役の坂口拓さんとは自主映画時代から20年以上の付き合いがあるそうです。

プライムビデオによる平均評価は、★5中、★3です。レビュー数は119件と比較的多数寄せられており、「すごいアクション」「最高峰のアクション」「「アクション最高!」といったアクションシーンを褒めるレビューが数多く見られました。しかしその一方で、「ストーリーに難あり」「ストーリーが全然面白くない」「飽きてくる」「自己満映画」といったようにストーリーに不満を寄せるものも多く見られました。

舞台は石川県加賀市。主人公はそこのコンビニで店員として働く黒田敏郎(坂口拓)。そんな彼は少女サチ(近藤結良)と一緒に暮らしていますが、かつては最強の特殊傭兵部隊に属し、訓練中にその部隊をほぼ全滅させた経験があります。そんなある日、近所の喫茶店で不可解な惨殺事件が起こります。それはかつての傭兵部隊の指揮官ファントム(大塚明夫)からの、敏郎に対する警告だったのです。これを機に敏郎はファントムを倒すことを決意し、ファントムが送り込んだ何人かの刺客と戦います。そんな矢先にサチがファントムの側近に誘拐されてしまい、敏郎は仲間2人を引き連れ、ファントムのアジトへ潜入することを試みるのですが・・・。以上ストーリーの前半を紹介しました。この映画は全体を通してアクション要素を全面的に押し出した作品となっています。

主人公の敏郎は、忍者映画では毎度おなじみの黒い忍者服を着ることなく、おまけに刀も持っていません。そのため当初は忍者映画のカテゴリーに入れるかどうか迷いましたが、敏郎の異常な体術やスピード能力の高さや途中、鎌やナイフ、シャベルといった武器を駆使して相手を倒すといった特殊性などから総合的に判断し、忍者映画として認定することにしました。敏郎は漫画『NARUTO』でいえば、ガイ先生やロック・リーに近い存在といえるでしょう。

そんな敏郎ですが、異常な強さを誇っています。今まで見てきた忍者映画の主人公の中でトップレベルの実力を備えた人物だと思います。最初の方に登場する、ロック(いしだ壱成)やニュート(篠田麻里子)といった刺客を一瞬で倒し、途中約200人の銃撃部隊と戦うのですが、いとも簡単に銃弾をよけて軽々と敵を倒していきます。一応仲間が二人付いていますが、比較の対象にならないほど強いです。映画の後半に、敏郎の元同僚であるアビスウォーカー(稲川良貴)との戦いでは敏郎も少し苦戦しますが、結局最後は圧倒的な強さで勝利をおさめてしまいます。これだけ強いと逆に敵がかわいそうになってきます。

また敏郎は、敵の息の根を止める時によく刃物で首を掻き切るのですが、これがまた百発百中で綺麗に斬ってしまうため、グロいというよりも清々しい気持ちにさせてくれます。「首切り達人」の称号を与えてもおかしくないレベルです。

結局のところこの映画は、主人公の異常な強さを豊富なアクションシーンで堪能することに重点が置かれたものだろうと思います。だからその分、ストーリー設定は未熟になっています。そもそもなぜ石川県加賀市が舞台なのか、敏郎が部隊を全滅させたのはなぜか、サチは昔何をされたのか、敏郎は結局最後どうなってしまったのか、物語のあらゆる場面でモヤモヤ感が生じます。また斎藤工や大塚明夫といった豪華な芸能人を起用しているのにもかかわらず、彼らを上手く活かしきれていないようにも感じました。

ただ口を酸っぱくして言いますが、アクションは本当にすごいです。清々しいアクションシーンを見ることで体術の素晴らしさを実感できますし、ストレス解消にもつながると思っています。敏郎の勇姿を多くの皆さんに見て頂きたいです。

以上で今回のレビューを終わります。次回は「忍術伝 Ninja Star」(2009年、監督:中田信一郎)をレビューしたいと思います!(院生 郷原記)