国際忍者研究センター

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(学生通信)映画レビュー⑪「ミュータント・タートルズ」<2014年、監督:ジョナサン・リーベスマン>(院生 郷原匠)

2020年09月01日

 本日紹介する映画は、2014年に公開された「ミュータント・タートルズ」というアメリカ映画です。ミラージュ・スタジオから1984年に出版された、ケヴィン・イーストマンとピーター・レアードによるアメリカン・コミックを原作とした実写映画であり、現在までに5本の実写作品が作られています。本作品に携わったジョナサン・リーベスマン監督は南アフリカ出身であり、過去に「タイタンの逆襲」(2012)や「実験室KR-13」(2009)といった作品を撮られています。

 プライムビデオによる平均評価は★5中、★4つ半と、なかなかの高評価です。「内容が分かりやすくて面白い」「家族で楽しく見られる!」「元気の出る映画」など高評価レビューが多く残されていた一方で、「吹き替えが最悪」「色々ともったいない作品」「ストーリー、アクションが平凡」といった酷評もありました。吹替版に対する不満が多く寄せられていたことが印象的でした。この映画に限らないことですが、洋画の吹替版には、素人声優(声優初心者または声優経験のない芸能人)を起用している場合が多いので、吹替版で洋画を鑑賞する際には、誰が吹替を担当しているかチェックすることをオススメします。

 芸能リポーターのエイプリル(ミーガン・フォックス)は、最近ニューヨークで猛威を振るいつつある、シュレッダー(トオル・マサムネ)率いる犯罪組織「フット団」について独自の調査を行っていました。仕事の合間を縫って事件の捜査をしていたある日、エイプリルは地下鉄の駅で暴れているフット団を発見し、撮影しようとしたところを人質にされてしまいます。その時、カメのシルエットをした謎の4人組が現れ、一瞬の内にフット団を蹴散らしエイプリルを救出します。彼らは「ミュータント・タートルズ」という忍者であり、興味を持ったエイプリルは彼らについても調査を始めます。調査を進める中で、彼らを作り上げたのは、科学者であった亡き父親であったことが判明し、エイプリルは父の友人であったサックス(ウィリアム・フィクナー)に話を聞きに行くのですが・・・。以上、ストーリーの冒頭部分を紹介しました。本作品は、ミュータント・タートルズVSフット団(シュレッダー)という非常に分かりやすいストーリー構造になっており、アクションシーンもそんなに過激でないことから、大人から子供まで純粋に楽しむことができます。その分、高尚な芸術映画が好きな人にとっては少し物足りないかもしれません。

 ミュータント・タートルズは、一言で表すならば「忍者亀」です。万能薬ミュータジェンを投与され超人的な能力を持つようになった亀軍団です。レオナルド、ラファエロ、ミケランジェロ、ドナテッロの4名で構成されており、レオナルドをリーダーとしてそれぞれ青・赤・橙・紫のメンバーカラーを持っています。ルネサンス期に活躍した芸術家の名前がつけられていますが、その意図は不明です。普段はニューヨーク市の下水道の中で暮らし、事件が起こると地上に現れ犯罪者やエイリアンと戦う設定になっており、肝心の忍術はスプリンターというネズミの師匠に教えてもらったそうです。非常にユニークなキャラクター設定であり、とても興味をそそられます。

 アメコミにおけるヒーローといえば、スーパーマンやバットマン、スパイダーマンなどが有名であり、日本でも高い知名度を誇っています。しかしミュータント・タートルズに関しては、日本人にあまり知られていないのが現状です。日本では過去に3回ほどアニメ放送化されたことで、熱烈なファンを一定数獲得したのですが、その後ビデオ展開だけ行われ、DVD・Blu-ray化が全くされなかったことで、大衆的な人気を確立させることができませんでした。時代にそぐわない市場展開のせいで、知名度を低くしてしまうのは非常にもったいないことです。一刻も早くDVD・Blu-ray化を進め、更なるファン層を獲得するべきでしょう。

 話がそれましたが、この映画はCG技術の質が高いことも高評価のポイントです。これは本作品に限らず、実写版アメコミヒーロー作品全体に言えます。亀たちの一つ一つの動きが細部まで凝っており、それらに注目する内に一瞬にして映画の世界に引き込まれます。実際に映画館で観たらもっと感動するのだろうと思いました。「ミュータント・タートルズ」シリーズは、おそらく今後も作成されるだろうと考えているので、次回作を待ち望みます。

 以上で今回のレビューを終わります。次回は「忍びの国」(2017年、監督:中村義洋)をレビューしたいと思います!(院生 郷原記)