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(学生通信)映画レビュー⑰「曇天に笑う」<2018年、監督:本広克行>(院生 郷原匠)
2020年10月19日
映画レビュー⑰「曇天に笑う」(2018年、監督:本広克行)
本日紹介する映画は、2018年に公開された「曇天に笑う」という映画です。監督の本広克行氏は、大ヒット作である「踊る大捜査線」シリーズや「サマータイムマシン・ブルース」(2005年)といった作品を撮られている有名な方です。「サマータイムマシン・ブルース」は和製版バック・トゥ・ザ・フューチャーという感じで、私も好きな作品の一つです。
プライムビデオによる平均評価は、上巻・下巻共に★5中、★2つで、お世辞にも高評価とはいえません。レビューには、「視聴者の心が曇天に笑う」「脚本・演技ともに残念」「途中で見るのをやめました」という酷評ばかりが存在し、一瞬目を疑いました。肯定的な感想としては、「俳優がイケメン揃い」「好きな俳優さん達ばかり」といった、キャスト陣を褒めるものばかりでした。
本作品は、『月刊コミックアヴァルス』にて2011年3月号から2013年6月号まで連載された、唐々煙『曇天に笑う』という漫画を原作にしています。漫画自体は非常に人気があり、舞台化、アニメ化もされています。しかしそれを実写映画にするのは、あまりよろしくなかったかもしれません。漫画の実写映画というと、「デビルマン」(2004年)や「進撃の巨人」(2015年)といったように大失敗した例が数多くありますが、今回の「曇天に笑う」もその例の一つかもしれません。
時は明治時代、曇三兄弟の長男、天火(福士蒼汰)は、次男・空丸(中山優馬)、三男・宙太郎(若山耀人)と共に仲良く暮らしていました。彼らの暮らす地は、三百年に一度、曇り空が続く時、世界を滅ぼす破壊の神・オロチが復活し、人々に災いをもたらすという伝説がありました。そんなオロチを復活させ、政府転覆をたくらむ忍者集団「風魔一族」が村を襲い、明治政府の特殊部隊「山犬」との戦争が勃発します。その最中、空丸が風魔一族によって捕らわれの身となってしまいます。天火は弟を救うため、風魔一族に戦いを挑むのですが・・・。以上ストーリーのあらすじを紹介しました。伊賀・甲賀ではなく風魔忍者を採用していることがとても興味深かったです。しかし映画の舞台は、琵琶湖に浮かぶ「獄門処」という島であるので、個人的には同じ滋賀県として、甲賀忍者を採用した方が良いのではないかと思いました。
本作品は、主演が大人気俳優である福士蒼汰さん、他にも中山優馬さんや古川雄輝さん、桐山漣さんなど多くのイケメン俳優を起用していることから、おそらく若い女性をターゲットにして作られたのだろうと思います。ファンにとっては目の保養になる癒し映画であることは間違いありません。
また時代が明治ということで、映画中では、服装や街並みなどに和洋折衷の要素を多く取り入れており、明治の世の中を上手く表現しておりました。高い予算を使って、細部まで表現しようとした様子を伺うことができ、とても感動しました。
おそらく今回の映画の一番の問題点は、脚本と俳優の演技力でしょう。脚本に関しては、途中までは良かったのですが、ラストが中途半端な状態で終わってしまったことで、映画を観終わった後に何ともいえないモヤモヤ感が残りました。それに加え、俳優陣の多くがセリフを棒読みしており、アクションシーンもなんだかぎこちないものでした。これらに不満を寄せるレビューが数多く存在したので、早急に改善すべきだろうと思います。
今回の作品は、風魔一族が出演しているものの、そこまで忍者色の強い映画ではありません。そのため、純粋な忍者映画を楽しみたいという方にとっては、少し物足りないかもしれません。しかし有名監督による話題作であることは間違いないので、食わず嫌いせずに一度観てみるのも良いかもしれません。
以上で今回のレビューを終わります。次回は「シャドウ・アサシン」(2019年、監督:ロブバールド)をレビューしたいと思います! (院生 郷原記)