国際忍者研究センター

三重大学では、伊賀地域の発展のために、
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(学生通信)映画レビュー㉙「SHINOBI」<2005年、監督:下山天>(院生 郷原匠)

2021年02月01日

 本日紹介する映画は、2005年に公開された「SHINOBI」という映画です。原作は、小説家の山田風太郎氏の名著『甲賀忍法帖』です。監督を務めた下山天氏は、「L-エル-」(2016年)や「ブルーハーツが聴こえる」(2016年)といった作品を撮られており、忍者関係の作品は今回が初めてとなります。

 プライムビデオによる平均評価は、★5中、★3つ半と、まあまあの評価でした。感想の中には、「面白かったです」「好きです」「仲間由紀恵の美しさに圧倒された」といった肯定的なものが多く、これといった酷評は見当たりませんでした。

 超人的な忍び達が暮らす、伊賀鍔隠れの里と甲賀卍谷の里。そこに暮らす朧(仲間由紀恵)と弦之介(オダギリジョー)は、里は違えどもお互いに愛し合う仲でした。元来、二つの里の間では、長年の間、闘い争うことを禁じられてきましたが、大御所・徳川家康はおぞましい伊賀と甲賀の里を滅ぼさんがために、2代将軍・徳川秀忠の将軍後継ぎを決めるための一種の賭けということを名目に、その全面対決を強いられてしまいました。伊賀・甲賀の里からは、それぞれ5名の力のある忍び達を選出します。伊賀側のメンバーは、朧をリーダーとして、薬師寺天膳(椎名桔平)、夜叉丸(坂口拓)、蛍火(沢尻エリカ)、蓑念鬼(伊藤俊)の5名。甲賀側のメンバーは、弦之介をリーダーとして、陽炎(黒谷友香)、室賀豹馬(升毅)、筑摩小四郎(虎牙光輝)、如月左衛門(木下ほうか/三好健児)の5名。その10人の間で殺し合いをし、生き残った者が駿府城に登城せよとのことでした。しかし弦之介はどうしても戦う気になれません。家康にその許しを請うために、メンバーを連れて駿府城へと向かいます。一方で朧もどうしても戦う気になれません。両者の里は一体どうなってしまうのでしょうか・・・。以上物語の冒頭部分を紹介しました。今回の作品は忍者映画ではなかなか珍しい、ロマンス要素をやや強調した作品となっています。朧と弦之介の間の悲劇の恋を描いた作品であり、他の忍者映画とは一線を画しています。

 映画に登場する忍者達はそれぞれ様々な忍術の使い手で、非常に個性豊かで面白いです。特にその中でも主人公の朧と弦之介はその中でも突出した強さを誇っています。朧は相手を見つめるだけで、身体のありとあらゆる血管を破裂させ死に至らしめるという、非常に恐ろしい特殊能力を持っており、一方の弦之介は、時間を操る能力を駆使して、相手の動きをスローモーションにさせてしまうというほぼ無敵の能力を持っています。映画中でも、弦之介は襲ってきた大量の忍者達を一瞬のうちに蹴散らしていました。もし私が忍者であれば、絶対にこの二人とは戦いたくありません。

 私自身は新感覚の忍者映画としてなかなか楽しめたのですが、映画評論家の中ではあまり評価が高くありませんでした。「文春きいちご賞」という最低映画のワースト1位を決めるコンテストで、2005年の1位になってしまったそうです。どうもあらゆる面で欠陥があるらしく、お世辞にも良い映画ではないそうです。確かにいくつか物足りない点、よく分からない点はありましたが、他の忍者映画に比べればその質は格段に上であります。世間の目は厳しいことを実感しました。

 ちなみに原作の『甲賀忍法帖』は、『面白倶楽部』(光文社)1958年12月号から1959年11月号まで連載した時代小説であり、小説だけでなく映画・漫画の題材にも使われ(せがわまさき『バジリスク~甲賀忍法帖~』や浅田寅ヲ『甲賀忍法帖・改』など)、英語や中国語に翻訳されて、世界中の人々にも人気があります。まさに日本を代表する名著といっても過言ではありません。私はまだ読んだことがないので、時間があればゆっくりとその世界に浸りたいと思っています。

 以上で今回のレビューを終わります。次回は「Lady Ninja~青い影~」(2018年、監督:藤原健一)をレビューしたいと思います!(院生 郷原記)