国際忍者研究センター

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(学生通信)映画レビュー㉝「下忍 青い影」<2019年、監督:山口義高>(院生 郷原匠)

2021年05月12日

 本日紹介する映画は、2019年に公開された「下忍 青い影」という映画です。前回レビューした「下忍 赤い影」の姉妹作品です。監督は山口義高さんという方で「アルカナ」(2013年)や「猫侍」(2014年)といった作品を作られています。

 プライムビデオによる平均評価は、★5中、★3つと微妙なランク付けとなっています。レビューの中には「キレッキレのアクションと役者の魅力が詰まった作品!」「最後のアクションがすごい!」「楽しめた!」といった高評価の内容がある中、一部、「つまらない」「もったいない作品」といった酷評もありました。

 時は幕末、琉球王国に住む尚(結木滉星)は、薩摩藩士の隆正(須賀貴匡)率いる一行に不当な差別を受けていました。尚は殴られ蹴られ、恋人のナツ(三上紗弥)は遊女として女郎屋に売られてしまいました。そんな時、尚は琉球武術の達人であるジンと出会い、強くなるために修行を重ねます。修行も終わりに近づいたある日、ジンは隆正と側近の女武者・リン(山本千尋)の手によって殺されてしまいます。ナツやジンの雪辱を果たすべく、尚はさらに修行を重ね、ひょんなことから倒幕の雰囲気が漂う江戸に流れ着きます。尚はそこで女郎屋で働く千(三上紗弥)に出会います。彼女はナツと瓜二つでした。しかも因縁の相手である隆正にも偶然遭遇します。いろいろなことに振り回される尚でありましたが、そんな彼に勝海舟(津田寛治)からある話が持ち掛けられました・・・。以上ストーリーの前半をご紹介しました。本作品には、「下忍 赤い影」の主人公、竜(寛一郎)も少し登場します。時系列でいえば、青い影→赤い影の順番となっていますが、どちらから観ても差し支えはありません。

 本作品は「下忍 赤い影」に比べて脚本が比較的しっかりしており、映画のラストのアクションシーンについても、アクション監督の坂口拓さんが監修されていたことから、非常に見ごたえがありました。個人的には「下忍 赤い影」よりも楽しく見ることができました。

 しかし本作品には重大な問題点があります。それは尚が琉球武術の達人となっていることです。尚はジンからの指導によって琉球武術を身に付けましたが、ジン曰く、自分の祖父は伊賀忍者であり、自分は祖父から武術を習った、とのことでした。つまりジンが修得し、尚に教えていたのは、琉球武術ではなく伊賀忍術なのです。この時点でキャラクター設定が破綻しています。「下忍 赤い影」の主人公、竜(伊賀忍者の末裔)と全く一緒になってしまっています。フィクションなので、せっかくならば琉球王国に実際に忍者が存在していたという設定にして、純粋な琉球忍術を尚に伝授してほしかったです。

 しかし映画の中では一瞬ですが、琉球武術の破片を見ることができます。琉球武術というのは、主に釵(サイ)という武器を使って戦う武器術と、空手(手 ティーという)を合わせたものをいいます。映画中でも一瞬だけ釵(サイ)や手(ティー)が登場します。どこで登場するのか見つけてみてください。

 ちなみに琉球王国に忍者が実在したのかどうかは明らかになっていません。間諜行為を働いた者も存在したらしいですが、一度深く検討してみる必要があります。ただ現在、沖縄県には、「琉球忍者」と呼ばれる忍者集団が存在しており、レキオスシアター(沖縄県中頭郡北谷町)にて、定期的に琉球忍者ショーを開催しています。日本忍者協議会にも加入されているとのことで、伊賀・甲賀忍者に並んで今後ますますの活躍が期待されます。皆様も沖縄県に観光の際は、ぜひ琉球忍者ショーをご覧頂ければと思います。

 以上で今回のレビューを終わります。次回は「アサシンクリード」(2016年、監督:ジャスティン・カーゼル)をレビューしたいと思います!(院生 郷原記)