国際忍者研究センター

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(学生通信)映画レビュー㊲「Elektra」<2005年、監督:ロブ・ボウマン>(院生 郷原匠)

2021年06月09日

 本日紹介する映画は、2005年に公開された「Elektra」というアメリカ映画です。バットマンやミュータント・タートルズと同じ、アメコミヒーロー作品です。監督のロブ・ボウマン氏は、他にも「X-ファイル ザ・ムービー」(1998)や「スティーヴン・キング 8つの悪夢」(2006)といった作品でも知られています。

 プライムビデオでの平均評価は、★5中、★3と微妙な評価でした。レビューについては、「普通に面白い」「かっこいい」といった高評価の内容もありましたが、どちらかといえば「キマグレで出来た映画」「最後が残念」「ツッコミどころ満載」など、酷評が多い印象を受けました。

 暗殺者エレクトラ(ジェニファー・ガーナ―)は、戦いによって命を落としていたものの、師匠スティック(テレンス・スタンプ)の忍術によって生き返り、彼の指導の下で、最強の暗殺者へと生まれ変わりました。そんなある日、エレクトラは依頼主マッケイブ(コリン・カニンガム)からの仕事を請け、ある島に住むことになりました。そこでエレクトラは、隣人のマーク(ゴラン・ヴィシュニック)とその娘アビー(キルステン・プラウト)に出会います。当初は避けていましたが、クリスマスパーティーに誘われたことをきっかけに、エレクトラはその家族と次第に打ち解けていきます。その時、依頼主から任務の詳細が伝えられます。その任務は、なんと「隣人のマークとアビーを抹殺せよ」というものでした。混乱するエレクトラでしたが、もし命令に背けば自らの命が狙われます。覚悟を決めたエレクトラは、彼らを暗殺することにしますが、突然謎の忍者集団が目の前に現れ、マークとアビーを襲います。エレクトラはなんとか忍者集団を蹴散らし、彼らをかくまいます。しかし新たな刺客がエレクトラ達を狙っていたのです・・・。以上ストーリーの前半をご紹介しました。

 本作品は、「デアデビル」(2003年、監督:マーク・スティーヴン・ジョンソン)という映画のヒロイン役エレクトラを主役にしたスピンオフ作品です。機会があれば「デアデビル」も見てみたいと思います。

 エレクトラは一度死んだものの、師匠の忍術によって生き返ったという謎の設定になっています。もちろん史実の忍術には、人を生き返らせる術は存在しません。またエレクトラは、真っ赤な衣装を着て、「サイ」と呼ばれる琉球武術の武器を駆使して、俊敏な動きで相手を仕留めます。くノ一衣装に赤色が多く使われるのと、躍動感あふれるスピードの持ち主であることから、「海外版くノ一」に認定したいと思います。

 そしてエレクトラのもう一つの特徴として、「頭の中でイメージするだけで敵の様子が分かる」というものがあります。一種の未来予知です。どうも「キマグレ」と呼ばれる瞑想修行を行うことで、その能力を養うことができるというのです。現代カルト教団で行われそうな修行で、とても怪しげではありますが、実際の忍術修行には近いものが存在します。

 甲賀伴党21代宗師家で、ラストニンジャとして名高い川上仁一氏によると、甲賀忍者には「神遊観」という修行があるそうで、内容としては、「布団に入り、動かないまま布団から起き上がり、戸を開けて外へ出て、何歩か歩いて戻って来る」というものです。慣れてきたら歩く距離を徐々に伸ばしていきます。いわば意識継続のための瞑想トレーニングです。服部半蔵正成は、この神遊観に長けており、敵地へ行かずとも敵城の中の様子を見ることができたという伝説が残っています。本作の「キマグレ」のモチーフが、神遊観にあるかどうかは分かりませんが、少なくとも、意識を集中させる術であるという点では一致しています。

 和の要素(特に忍者)を取り入れたアメリカのヒーロー作品ということで、個人的にはなかなか面白かったのですが、映画のラストになるにつれて脚本が雑になっており、ラストもよく分からない状態で終わってしまいました。それだけが少し心残りでした。しかしそれ以外は面白く作られているので、ご興味があれば、海外版くノ一の活躍をご覧下さい。

 以上で今回のレビューを終わります。次回は「関ヶ原」(2017年、監督:原田眞人)をレビューしたいと思います!(院生 郷原記)