国際忍者研究センター

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(学生通信)映画レビュー㊵「虎影」<2014年、監督:西村喜廣>(院生 郷原匠)

2021年06月30日

 本日紹介する映画は、2014年に公開された「虎影」という映画です。監督の西村喜廣氏は、他に「東京残酷警察」(2008年)や「ヘルドライバー」(2010年)といった作品を撮られています。

 プライムビデオでの平均評価は、★5中、★3と、なんともいえない評価でした。レビューとしては、良い感想はほとんどなく、「ここ10年で最も悪い」「なにこれ」「役者がかわいそう」「苦痛になる」といった酷評ばかりで悲しい気持ちになりました。

 ホムラ衆の凄腕忍者として活躍していた虎影(斎藤巧)は、現在は忍者を引退し、同じホムラ衆のくノ一だった、妻・月影(芳賀優里亜)と息子・狐月(石川樹)と共に、農民として平和に暮らしていました。そんなある日、狐月がホムラ衆のくノ一達によって連れ去られてしまいます。狐月を救出するために、虎影と月影は、ホムラ衆の頭領・東雲幻斎(しいなえいひ)の下へ向かいますが、財宝の場所が記されている「金の巻物」を入手しない限り、狐月を返さないと突き付けられます。その金の巻物は、邪厳藩藩主・リクリ(津田寛治)が持っていることが判明し、虎影と月影は邪厳藩に潜入します。邪厳藩は、地元の宗教「邪厳教」を悪用して人々を支配していました。二人はなんとか城に忍び込みますが、不運なことに、邪厳藩の忍び、鬼卍(三元雅芸)と鬼十字(清野菜名)によって、二人は捕まってしまいます。リクリは虎影に対して、ホムラ衆が持っている「銀の巻物」を入手できなければ、月影を、邪厳教の祭典「人柱祭」の生贄にすることを伝えます。虎影は板挟みになってしまいました。果たして月影と狐月の運命はいかに・・・。以上ストーリーの前半をご紹介しました。

 今回、ストーリー的にはシリアスな内容なのですが、所々に中途半端なコメディーが加わっており、非常にまとまりのない作品になっています。これはレビューでも指摘されていました。また「虎影が竹でできたパワードスーツを身にまとう」「人間手裏剣という謎の技が出てくる」「身体中に目玉がついた謎の怪物が登場する」「映画「呪怨」の監督が登場する」「虎影が下品な言葉を連発する」など、意味不明なシーンも多数登場します。私はわりと好きでしたが、おそらく賛否両論分かれると思います。忍者映画というよりも、一種の芸術映画と捉えるべきでしょう。

 個人的に気になったのは、ポルトガル出身の忍者博士「フランシスコ」という人物の存在です。なんと彼は、映画の途中途中で登場し、不必要な説明を加えてくるのです。せっかく盛り上がっている所に、急に割り込んで説明を始めるので、雰囲気が盛り下がってしまいました。これは少し残念でした。もう少しフランシスコの登場は控えめにするべきだと思います。

 ちなみに本作品には、伊賀流忍者博物館で活躍中の忍者集団「阿修羅」の頭領、浮田半蔵さんと、そのメンバー・浮田知之助さんが出演されています。半蔵さんは、手裏剣の威力を説明する忍者役として、知之助さんは、ホムラ衆に仕える幻術使いとして出演されています。これは非常に面白かったです。また虎影と月影が邪厳藩に潜入する時に、伊賀市の公式キャラクター「いがグリオ」も登場します。一瞬だけの出演なので、どこに登場するのか皆さんも探してみてください。

 とてもユーモアあふれる忍者映画(芸術映画)となっているので、少し変わった作品を鑑賞したい!という方は、ぜひともご覧頂ければと思います。

 以上で今回のレビューを終わります。次回は「劇場版アニメ 忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段」(2011年、藤森雅也)をレビューしたいと思います!(院生 郷原記)