国際忍者研究センター

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(学生通信)映画レビュー㊷「忍たま乱太郎」<2011年、監督:三池崇史>(院生 郷原匠)

2021年07月14日

 本日紹介する映画は、2011年に公開された「忍たま乱太郎」という映画です。あの大人気アニメ「忍たま乱太郎」の実写映画です。前回レビューした「劇場版アニメ 忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段」と同じ年に公開されているので、2011年は、忍たま映画の年といえるでしょう。監督の三池崇史氏は、日本で非常に有名な映画監督で、「オーディション」(1999年)や「悪の教典」(2012年)といった作品を撮られています。

 プライムビデオでの平均評価は、★5中、★3つ半とまあまあの評価でした。レビューには、「親子で楽しめる」「良い!」「子供映画としてなら及第点」といった高評価の内容が見受けられる中、一部「うーん」といったプチ酷評もありました。

 ヒラ忍者の家系に生まれた猪名寺乱太郎(加藤清史郎)は、一流の忍者になるため、忍術学園に入学します。1年は組の忍たまとして、摂津のきり丸(林遼威)や福富しんべヱ(木村風太)など、個性豊かな仲間達と共に、日々忍術修行に励みます。学園長の急な思い付きで夏休みが1ヶ月早くなりました。その最中、ある事件が起こります。どうも、4年は組の斉藤タカ丸親子が何者かによって命を狙われているらしいのです。斉藤家は元々伊賀忍者でありましたが、抜け忍となったことで、風魔忍者の海松万寿烏(竹中直人)と海松土寿烏(石垣佑磨)に命を狙われていました。土井先生(三浦貴大)は斉藤親子を自宅にかくまうべく彼らを連れて家に帰ります。その事を聞いた忍術学園の生徒達、風魔流忍術学校の先生・生徒達も土井先生の家に集まりました。そして海松万寿烏と海松土寿烏がやって来ます。加えてドクササコの凄腕忍者も現れ、現場は大混乱となります・・・。以上、ストーリーの概要をご紹介しました。

 さて今回の作品ですが、大人気アニメ「忍たま乱太郎」を実写化したということで、一時期とても話題になりました。物語の大筋については、前半で、1年は組の忍たま達の、日々の忍術修行の様子を描き、後半で、斉藤親子を助けるために忍術学園の生徒達がドタバタ劇を繰り広げるといった内容です。

 さすがにアニメのような軽快なテンポ感はありませんでしたが、忍たまの世界を忠実に再現できていたことは評価すべきだと思います。CGも細部まで凝っており、非常に見ごたえがありました。アニメ映画を実写化して失敗した例は山のように存在しますが、今回の実写化は比較的成功したといえるでしょう。特に、1年は組のメンバーの無邪気な様子は本当に上手く再現できており、現実に忍たま達が存在したらこんな感じなんだろうなあと、楽しく鑑賞することができました。

 個人的に興味深かったのは、忍たま達の日々の修行の様子です。焙烙火矢(手榴弾のようなもの)を授業で取り扱ったり、歴史の講義で、聖徳太子が用いたとされる「志能便」が登場したりするなど、忍者研究の知見をフルに活かしている様子がうかがえました。忍者研究をしている身としては、とても嬉しく感じました。

 一部、食堂に置かれた段ボールに「JA全農 えひめ」という現代的な言葉が記されていたり、当時の日本社会では絶対に存在しない「カレーライス」を忍たま達が食べていたりするなど、ツッコミどころ満載のシーンもいくつかありましたが、映画の本質に関わることではないので、今回は目をつぶりたいと思います。

 熱烈な忍たまアニメファンにとっては、少し物足りなく感じるかもしれませんが、そうでなければ子どもから大人まで楽しく鑑賞することができます。アニメだけでは味わえない忍たまの世界を、より多くの人に体験してほしいと思います。

 以上で今回のレビューを終わります。次回は「リトル・ニンジャ 市松模様の逆襲」(2018年、監督:ソービョルン・クリストファーセン)をレビューしたいと思います!(院生 郷原匠記)