国際忍者研究センター

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(学生通信)映画レビュー㊾「ラスト・ブラッド」<2009年、監督:クリス・ナオン>(院生 郷原匠)

2021年11月02日

 本日紹介する映画は、2009年に公開された「ラスト・ブラッド」という香港・フランスの合作映画です。『BLOOD THE LAST VAMPIRE』というメディアミックス作品群を原作としています。監督のクリス・ナオン氏は、この他に「キス・オブ・ザ・ドラゴン」(2001年)や「エンパイア・オブ・ザ・ウルフ」(2005年)といった作品を撮られています。

 プライムビデオでの平均評価は、★5中、★3つ半とまあまあの評価でした。「B級映画としては面白かった」「アクションは楽しめる」など、比較的高評価なレビューが寄せられている一方で、「なんだこれ」「ストーリーはないに等しい」「ひどい」といった酷評も数多く見受けられました。

 16世紀の日本。オニゲン(小雪)は、凶暴な種族「オニ」を作り出し、人類を滅亡させようと計画していました。その最中、人間とオニのハーフであるサヤ(チョン・ジヒョン)が現れます。サヤは自らの両親がオニゲンに殺されたことを知り、オニゲンへの復讐を誓います。時は流れて1970年の日本。サヤはオニの能力によって生き続けており、現代においても鬼斬りとして暗躍していました。秘密組織からの命令で、東京のアメリカ空軍基地に潜入したサヤは、将軍の娘・アリス(アリソン・ミラー)と出会います。ある日、アリスはクラスメイトに化けたオニによって殺されそうになります。サヤはアリスを助けますが、自分が鬼斬りだということを知られてはならないため、アリスに今見たことを全て忘れるよう命じます。何が何だか理解できないアリスでしたが、偶然訪れたバーで、これまた大量のオニに襲われてしまうのです・・・。以上、ストーリーの前半部分をご紹介しました。

 今回の映画は、R15+指定になっているため、鑑賞の際には少し注意が必要です。とにかく血がブシュブシュ吹き出すので、そういったグロ描写が苦手な方は気持ち悪くなるかもしれません。アクション映画にはどうしても血はつきものでありますが、本作品の血の量は、スプラッター映画並みに多い方だと思います。

 本作品のどこに忍者が登場するのかというと、サヤの回想シーンで登場します。時代は戦国期かと思われますが、サヤの義理の親であるカトウが、オニゲン率いる大量の「忍者オニ」と闘います。忍者オニ達は、黒装束に身を包み、忍者刀や手裏剣を駆使して戦います。空を飛んだり土の中を進んだりもします。忍者作品によく描かれる超人的な忍者像を、本作品でじっくりと見ることができます。

 ちなみに本作品ですが、どこか見覚えがあるなと思っていたら、2020年に大ヒットした『鬼滅の刃』のストーリーに似ていることが分かりました。人間VSオニというのは、まさに『鬼滅の刃』の世界観そのものであり、両親を殺されたサヤがオニゲンに復讐を誓うというのは、鬼舞辻無惨(オニの始祖)に親兄弟を殺された竈門炭治郎(主人公)が、復讐を誓うことに似ています。なんだか海外版実写『鬼滅の刃』を見ているかのような気分になりました。『鬼滅の刃』は、もしかしたら本作品にインスパイアを受けているかもしれません。

 純粋な忍者映画ではありませんが、物語の一部に上手く忍者を登場させているため、個人的には華のある作品に仕上がっているのではないかと思っています。『鬼滅の刃』の世界観が好きな方であれば、しっかりと楽しめる作品になっておりますので、ぜひご覧頂ければと思います。

 以上で今回のレビューを終わります。次回は「忍ジャニ参上!未来への戦い」(2014年、監督:井上昌典)をレビューしたいと思います!(院生 郷原記)