国際忍者研究センター

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(学生通信)映画レビュー55「忍びの者 霧隠才蔵」(院生 郷原匠)

2022年01月10日

本日紹介する映画は、1964年に公開された「忍びの者 霧隠才蔵」という映画です。映画「忍びの者」シリーズ第4作目です。前回までは石川五右衛門が主人公でしたが、今回からは霧隠才蔵が主人公です。監督も森一生氏から田中徳三氏になりました。田中氏は、他に「悪名」(1961年)や「新・座頭市物語」(1963年)といった作品を撮られています。

プライムビデオの平均評価は、★5中、★4と、高い評価でした。レビューには「文句なしに面白い」「感謝」「熱い情熱が伝わる」といった高評価のものばかりで、これといった酷評はありませんでした。「忍びの者」シリーズ4作目にしても高い評価を得ていることは、本当にすごいことだと思います。

慶長19年(1614)、徳川家康(二代目中村鴈治郎)は、大阪冬の陣において豊臣秀頼(成田純一郎)を攻め、秀頼の居城・大坂城の内堀を埋めて豊臣方を苦しめます。秀頼の忠実な家臣・真田幸村(若山富三郎)には、霧隠才蔵(市川雷蔵)という凄腕の伊賀忍びがいました。幸村は家康の動向をつかむために、家康の住む駿府に潜入するよう才蔵に命じ付けます。しかし才蔵は、家康が遣わした武部与藤次(須賀不二男)の一党によって襲われ、ある遊女屋に逃げ込みます。才蔵はそこで、同郷の仲間であるくノ一の茜(磯村みどり)と出会います。久々の再会に喜ぶ2人でありましたが、武部勢から逃れるためにすぐに別れます。そんな中で、幸村に仕える他の忍者達も駿府に潜入します。彼らは毎年開かれる花見の宴において短銃を発砲し、それを合図として才蔵は駿府城へと忍び込みます。才蔵はそこで家康を捕らえます。しかしそれは影武者でした。逆に捕らえられてしまった才蔵は石牢に閉じ込められてしまいます。最悪なことに、茜までも捕らえられてしまいました。才蔵達は果たしてどうなってしまうのでしょうか・・・。以上ストーリーの前半をご紹介しました。

今回主人公の霧隠才蔵も、前回の石川五右衛門と同様に、市川雷蔵氏が演じています。才蔵は真田幸村に忠実に仕える忍者として上手く描かれており、ほぼ一匹狼であった五右衛門とはまた違った感じで表現されていました。

霧隠才蔵は、立川文庫の『猿飛佐助』に登場する架空の忍者であり、真田幸村に仕える忍者「真田十勇士」の一人として知られています。浅井長政の家臣・霧隠弾正左衛門の遺児であり、百地三太夫から伊賀流忍術を授かったとされています。猿飛佐助に並んで人気の高い忍者であり、甲賀流忍術・猿飛佐助VS伊賀流忍術・霧隠才蔵のように、ライバル関係として描かれることもあります。

映画「忍びの者」シリーズは、リアルな忍者を追求した内容であるため、今回登場する才蔵も摩訶不思議な忍術を披露することはありません。前回のレビューでも言及しましたが、専ら陽忍術と陰忍術を駆使して相手に近づきます。細部までリアルに描かれているので、日本史上に実際に存在した忍者はこうであっただろうと、楽しく想像することができます。

ちなみに真田十勇士を描いた作品としては、堤幸彦監督「真田十勇士」(2016年)も有名です。こちらについても、以前レビューさせて頂いたので、もしよろしければご覧ください。この作品は、コメディ要素満載で描かれているので、今回の作品と比較して観てみるのも面白いと思います。

以上で今回のレビューを終わります。次回は「忍びの者 続・霧隠才蔵」(1964年、監督:池広一夫)をレビューしたいと思います!(院生 郷原記)