国際忍者研究センター

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(エッセイ)歌舞伎座2022年6月公演『信康』の服部半蔵(吉丸雄哉)

2022年04月28日

 今年(2022年)の六月の歌舞伎座公演は、第二部に『信康』(田中喜三作、齋藤雅文演出)がかかる。信康とは、家康の長男ながら、家康の命により切腹させられた人物である。『三河物語』では服部半蔵が介錯の場に立ち会った(介錯しようとしたができなかった)とされ、現代の創作にも大佛次郎『築山殿始末』など信康切腹の関係で登場する。
新歌舞伎『信康』としては1974年3月と1996年6月に公演があったようで、早くは

 1974年は歌舞伎公演データベース( https://kabukidb.net/show/255 )から

家康の嫡子岡崎城主松平三郎信康 = 澤村精四郎
三河遠江の領主徳川家康 = 中村富十郎(5代目)
家康妻信康母築山御前 = 澤村訥升(5代目)
家康旗本服部半蔵 = 中村山左衛門(5代目)

 1996年は同じく歌舞伎公演データベースで( https://kabukidb.net/show/508#section1 )から

松平三郎信康 = 市川新之助(7代目)
徳川家康 = 市川團十郎(12代目)
平岩七之助新吉 = 河原崎権十郎(3代目)
築山御前 = 澤村田之助(6代目)
服部半蔵 = 嵐橘三郎(6代目)

 だったとわかる。

 1974年の歌舞伎界の状況はわからないが、1996年は私にも理解できる。当時新之助だった現市川海老蔵(11代目)と亡くなった市川團十郎(12代目)の親子共演が見どころだったのだろう。新之助の海老蔵は19歳で、こののちすぐに尾上菊之助(5代目)、尾上辰之助(2代目、現在尾上松緑)とともに「三之助」と呼ばれて人気を博した。

 2022年6月の『信康』だが、チラシから( https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/761 )

徳川信康=市川染五郎
徳川家康=松本白鸚
築山御前=中村魁春

 などがわかっている。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で木曽義高を演じるなど人気の市川染五郎と、祖父の松本白鸚の取り合わせで集客する計画で、前回の『信康』の海老蔵と同様に染五郎にもスターの道をたどって欲しいという期待のあらわれだろう。

  服部半蔵は役が小さいためか現在のチラシから誰が演じるのかわからない。
  珍しい演目の上演だが、三重県在住の私が公演を実際に観る機会はないと思う。観る機会がある人は、染五郎と白鸚の共演だけでなく、服部半蔵とその役者にも気を配って、ブログなどどこかで言及してもらえるとありがたい。(吉丸記)