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(エッセイ)国立国会図書館 本の万華鏡第33回「NINJA 虚像(エンタメ)と実像(ホンモノ)」(吉丸雄哉)
2023年05月18日
国立国会図書館は2009年5月に電子展示「本の万華鏡」というサイトを開設し、2023年4月に第33回「NINJA 虚像(エンタメ)と実像(ホンモノ)」が公開されています。
どの回も興味深いテーマを、主に国立国会図書館所蔵の資料をつかって、わかりやすく説明しています。
第33回「NINJA 虚像(エンタメ)と実像(ホンモノ)」は次のURLから閲覧できます。
https://www.ndl.go.jp/kaleido/entry/33/index.html
よくできているので是非ご覧ください。
このサイトは2010年以降の忍者研究の成果が反映されています。なかでも私の研究がよく使われているのが感慨深いです。
まず、「実像」と「虚像」を分けていますが、これは三重大学が忍者研究を開始したときに、史実の忍者と作られた忍者像を分けることを強く意識しており、これは他の忍者研究にも引き継がれています。私自身は史実の忍者を「忍び」、作られた忍者像を今まで通りの「忍者」と呼んではどうかと提唱しました。私自身、ちょっとした説明のときにはすべて「忍者」で通しており、名称に拘りはないのですが、二つを分けて考える態度は必要だと考えます。国立国会図書館が「忍者」で通したのも混乱を避けるためによかったでしょう。
「壱之巻 エンタメ世界の忍者-華麗なレッドカーペット」( https://www.ndl.go.jp/kaleido/entry/33/1.html)の項目説明は、私の『忍者とは何か』(KADOKAWA、2022)に拠るところが大きいです。参考にしてもらって嬉しいのと、あまりにそのままで笑ってしまうのと、参考文献一覧に出ているので問題はないもののせっかく研究で導き出したことが特に私の成果と記していないのは残念、という気持ちが、最初に読んだときにはまざってこみ上げました。どなたか解説をご執筆か明記していないですが、470頁もある『忍者とは何か』を始め、いくつかの私の研究をご覧になっての執筆はたいへんな労力が必要だったはずです。
全体を見ても、2010年以前なら、今回の「本の万華鏡」のような内容にならなかったはずで、こうやって個々の研究が公知になっていくのだと思うと感慨深いです。
やっぱり多くの研究者が参加したことが2010年以降の忍者研究の発展につながっているので、このサイトを見た人が忍者に興味をもって、今後忍者研究に参加してくださることを願っています。(吉丸記)