国際忍者研究センター

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(学生通信)武田家の家訓と馬に対する思いやり(院生 ペトロフ・キリル)

2023年05月22日

 武田家は戦国武時代の最も代表的な武家の例の一つとしてよく知られています。甲斐国を支配して戦場で優れた戦法を実施した武田信玄は、戦国大名として非常に有名です。未だに武田家と言えば、「風林火山」という標語や、武田菱という家紋などが頭に浮かびますが、赤備えの甲冑を着用している馬上術が優れた騎兵隊でもよく知られています。
 戦国時代の日本の中では、最も強い騎兵隊を持っていたのは武田家だった、と多くの人々に思われていますが、それは歴史的に本当なのか、それとも、江戸時代の理想的な作り話なのか、私にはまだまだ不明です。しかし、武田氏は馬上術と騎兵隊の武力・武者振りを非常に重要にしていたに違いないと考えられて、それは武田氏の家訓にも見られます。
 他の武家と同じく武田家にも家訓があって、同家が大切にしていた心得と価値観を99箇条で説いている書物です。その99箇条の中に、馬への思いやりを説いている文章もあります。第41箇条にはこのように書かれています:

 馬を愛す
 馬の手入れをよくすること。『論語』にも、「犬は外敵を防ぐことにより、馬は人の労働に代ることにより、立派に人の役に立っている」とある。

 武家にかかわらず、騎兵の武士が馬を大切にするのは当たり前なことかもしれません。しかし、上杉氏、北条氏、島津氏などの家訓を熟読すれば、そのような文章が書かれていないことが見られます。それらの武家にも馬術がありましたが、武田氏が馬に対する思いやりを家訓に1箇条として書き入れたというのは、武田家は他の多くの武家より馬上を重視していたことを表していると推測できると思います。
 無論、私がまだ読んでいない武家の家訓が多く残っているので、さらに有効な家訓の比較を行うことには、それらもこれから熟読する必要があります。(院生 ペトロフ記)