国際忍者研究センター

三重大学では、伊賀地域の発展のために、
忍者の歴史や文化を研究し、その成果を発信しています。

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(エッセイ)恐怖のスペイン忍術(酒井裕太)

2019年06月28日

 バルタン星人、と言えばどの年齢層の方も大体想像がつくかと思います。セミみたいな顔をして、ザリガニのような大きな爪のフォフォフォとなくあの怪獣です。しかし、バルタン星人の異名が「宇宙忍者」であることはあまり知られていません。一体、あの怪獣のどこが忍者なのかまったく不明ですが、製作者が忍者と言い切ってしまっているのでどうしようもありません。
 私が少年の頃、多くの同世代の少年を苦しめた「実は忍者」がいました。最近では見かけなくなりましたが、昔はよく個人経営のスーパーの前なんかにゲームセンターに置かれているようなゲーム機が一、二台だけ置かれていて、少年たちは、なけなしの100円玉で戦いに挑んでいました。なぜか一番端のボタンが溶けていたり(きっと誰かがタバコを置いた)、負けて悔しかったのか、それとも力自慢をしたかったのか、ゲーム機の側面には思いっきり蹴られたような跡があって「〇〇先輩が蹴った、いや〇〇先輩が蹴った」などとどうでもいい議論がされ、ゲーム機はボロボロではありましたが、それだけ多くの少年を魅了して、興奮させていたのです。
 最も少年を沸かせていたのが「ストリートファイターⅡ」通称「ストⅡ」というシリーズでした。このシリーズは現在でも継続されていて最新作が世界中でプレイされており、eスポーツと言われるものになっています。ゲーム内容はいたってシンプルな対戦型格闘ゲームで、キャラクターを選び、勝ち進んでいくだけです。ある程度の敵を倒すと、「四天王」と呼ばれる強敵が現れ、その四人をすべて倒せばクリアーとなります。この四天王、一人目がボクサー、バイソンなんですが、こいつはエドモンド本田という力士で挑めば、必殺技「百裂張り手」を出し続ければ勝手に負けてくれるのです。で、このバイソンを倒した後に現れる四天王の二人目、それが長い鉤爪をつけたナルシストの仮面の貴公子、バルログです。体が大きいのにちょこまかと動き回り、いきなり天から「ヒョー!」と言って鉤爪で襲い掛かってくるこの男の使う技、それが「スペイン忍術」でした。このスペイン忍術により、日本中の小中学生は多くのお金を失いました。なけなしの最後の100円玉でもう一度戦いに挑んでも「ヒョー!」っと倒されてしまい、ゲーム機を蹴った輩の怒りにシンパシーを感じ、「スペイン忍術」の恐ろしさを思い知らされるのでした。
 余談ですが(基本私のブログが余談ですが)、その後発売された他社の「ニンジャコンバット」というゲームもあり、このゲームに至ってはめちゃくちゃ難しいうえ、「二枚の能面を被ってミサイルを抱えながら突進してくる巨人」というすごいセンスの敵が出てくるなど、スペイン忍術より子供から金を巻き上げた怪作でした。(酒井記)