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(学生通信)ご挨拶 (院生 凛)
2019年07月05日
皆の衆、息災にござるか。拙者は徳川家康と服部半蔵忍者隊の軽業の凛ともうす。本年の四月より三重大学にて忍びの勉学に励んでおる大学院生じゃ。ふだんは、愛知の観光発信のため名古屋城に出陣いたしおもてなしを行なっておる。このたびは、拙者もようやっと学生生活に慣れてきたゆえ石筆をとった次第じゃ。
さて、我々は忍ばぬ忍びとして愛知の観光を発信いたす任に就いておる。真昼間より黒き忍び装束にてお客人と交流をはかり、写し絵をともに撮ったり、土日祝日には忍者ショーにて殺陣や剣舞を披露しておりもうす。そのなかにて、もっとも多くかつ印象深き客人の質問についてこたびは話すといたそう。
「忍びであるのに、なにゆえ忍ばないのですか。」
皆のなかには知っておる者もおるやもしれぬが、我ら忍びは隠密にて任務を行い、たとえ家族であっても、その内容を明かさぬほどの秘密主義者にござりもうした。しかしいま、特に我々服部半蔵忍者隊はその真逆のことを行なっておるのじゃ。——忍ばず、目立つ。
我らの発信しておる忍すたぐらむ、いわゆるインスタグラムも支援者、ふぉろわあが八千人を突破いたし、我々は今後ますます世に出てゆこうと考えておる次第にござるが、これは忍びの美学からすると二流三流でござるといえるのやもしれぬ。左様、我々は誠の忍びではござらんともいえそうじゃ。
しかしのう。実は、忍びの忍術書である『用間加條伝目口義(ようかんかじょうでんもくくぎ)』には以下のような記述がござるのじゃ。
陰ノ忍ノミカ肝要ナルヘキニ陽ノ忍ヲ用ルハ如何ト云ニ此国ニ忍ノ名有者居ルト他へ聞ヘル時ハ他ノ忍ノ者窺ヒ難シ又窺フ時ハアラワレテ此方ノ忍ノ者ヘ便リテ来ル也
我ら服部半蔵忍者隊は、陰ノ忍として肝要とはたしかに言いがたいのやもしれぬ。しかし陽ノ忍として、各国の忍びが集う呼び水としての役割を担うことはできるはずじゃ。ありがたきことに、そんな我らに力を貸してくれる者は年々増えつづけておる。皆、我らに夢を懸けてくれておるのではあるまいか。
拙者自身、忍びという存在にはひと一倍夢を懸けておるがゆえに、掘れば掘るほど最果てがござらん忍びの道を、今後とも究めてゆきたいと考えておる。いまはまだ頭数にも入らぬやもしれぬが、愚直に積み上げ、日々鍛錬に励むことにより自らの足で立ち歩んでまいりたい。(院生 凛記)