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(学生通信)映画レビュー③「レッド・ブレイド(2018年、監督:石原貴洋)」(院生 郷原匠)
2020年06月24日
本日紹介する映画は、2018年に公開された「レッド・ブレイド」というくノ一映画です。監督は石原貴洋さんという方です。「大阪外道」「VIOLENCE PM」といった暴力系の作品を多く撮っていらっしゃるそうですが、私はまだ一度も見たことがありません。忍者映画としてはこれが初めての作品です。
プライムビデオによる平均評価は、★5中、★3です。レビューの中には、「納得の及第点」「アクションシーンが素晴らしい」といった高評価のもの、「主人公がエロ可愛い」「むふふ映画」といった下心丸出しのもの、「脚本頑張って」「情けない作品」といった酷評ものが混在している様子でした。
主人公はいじめられっ子のマコ(小倉優香)。現代に生きる女の子の設定です。図書室で「雷風迅」という忍者絵本に出会ったことでくノ一に憧れを抱きます。ある夜、川辺でランニングをしていると二人のくノ一、ヒロ(搗宮姫奈)とユウ(花影香音)に出会い、急に忍者世界にタイムスリップして絵本の世界に入り込みます。そこでマコはくノ一になることを決意し、忍者修行を通してメキメキとその実力をつけていきます。成長したマコはヒロ、ユウと共に、憎き悪敵である原田勘助(岩永ジョーイ)を倒しに行くのですが・・・以上ストーリーの前半部分を紹介しましたが、いじめられっ子がおとぎ話の世界に迷い込むというのは、「ネバーエンディングストーリー」に近いものを感じます。
主人公マコ役の小倉優香さんは、レビューにもありましたが、スレンダーな身体、素朴で可愛らしい顔立ちでくノ一にとても適した人物であるように感じました。くノ一映画はこれまでに何本か撮られ、様々な女優がくノ一を演じてきましたが、トップレベルでしっくりくる人物だと思います。今後の作品も楽しみです。
忍者映画の質を決める肝心のアクションシーンですが、これがなかなかの高レベルでした。殺陣演技が見事なもので、超人的な忍者像が上手く演出されていました。一部、物理的におかしい動作もありましたが、これも忍者のなせる業、大目に見るとしましょう。またこの映画には、苦無や吹き矢、煙玉、鎌といった忍者道具がたくさん登場します。男忍者よりもくノ一が使うことでどこか華やかさが増すと思うのは私だけでしょうか。
原田勘助と戦うシーンにおいては、原田が異常に強く書かれています。香港映画「プロジェクトA」のラスボス、サン兄のように超人的な身体能力、耐久性を備えた設定となっています。そんな原田を彼女達はどうやって倒したのか。これはぜひ映画をご視聴下さい。いかにも忍者らしい倒し方です。
ちなみにこの映画には友情出演として「阿修羅」の頭、浮田半蔵さんが出演されています。途中くノ一3人組と戦うのですが、浮田さんの一つ一つの立ち振る舞いや眼力がとても迫力があり見ごたえがあります。この戦闘シーンは背景から察するに伊賀流忍者博物館で撮影されたものと思われますので、伊賀在住の方や博物館に一度訪れたことのある人は、おっ!と思われるかもしれません。
このように配役やアクションシーンにおいては申し分ないのですが、どうしても演出と脚本に中途半端な部分が見られます。演出においては、高速で走るシーンのはずなのに、全く高速に見えない、忍者修行のシーンが大学のサークルのようなほのぼのとした感じになっていることなどが挙げられます。一方で脚本においては、忍者映画では毎度おなじみの意味不明な対話が多出していること、映画の最後の方で現実とおとぎ話の世界がごちゃごちゃになってしまっていることなどが挙げられます。結局それらの細かい部分が評価を落としている原因となっているのでしょう。
しかし細かいところを除けば、娯楽映画としては文句なしの映画です。くノ一映画の入門編としてはもってこいの映画ですし、純粋な気持ちで見ればとても楽しい時間を過ごせると思います。くノ一に興味のある方はぜひご覧下さい。
以上で今回のレビューを終わります。次回は「忍者(2007年、監督:ハーマン・ヤウ)」を紹介したいと思います!(院生 郷原記)