国際忍者研究センター

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(学生通信)映画レビュー④「忍者」(2007年、監督:ハーマン・ヤウ)(院生 郷原匠)

2020年07月01日

 本日紹介する映画は、2007年に公開された「忍者」という映画です。監督はハーマン・ヤウさんという方で、過去に「八仙飯店之人肉饅頭」という非常にグロい映画を撮っていることで有名な人物です。この映画は中国・香港・日本の合作映画だそうで、中国では「終極忍者」という題名で上映されました。

 プライムビデオによる平均評価は、★5中、★2つ半で多少低い評価となっています。レビューが2件しかないので、まだ多くの人が見ていない可能性もあります。数少ないレビューには「期待外れ」「面白みがない」といった酷評が多い中、「登場人物が魅力的」といった高評価ものもありました。今後どのようなレビューが増えてくるか注目ですね。

 どんなウイルスにも抵抗できる奇跡のワクチンを開発した菊池博士(許安達)が、虎大介(魔裟斗)率いる甲賀忍者隊に殺害された。その命令を下したのは、全人類を支配したいとの野望を持つブライアン(レイ・チーホン)。ワクチンの入った箱を開けられるのは、コピー(黄子華)という人物だけであるということを菊池博士が死に際に残したことから、ブライアンは甲賀忍者隊を派遣させてコピーを捕らえようとする。そんな折、甲賀忍者と対立関係にある伊賀忍者の上忍、芭蕉先生(高雄)はそのことを知り、コピーをかくまうことを決意する。孫で下忍くノ一の小霊(黄聖依)をコピーの所へ遣わしたが、謎のくノ一、響(白田久子)が目の前に現れる。そうこうしているうちに虎大介も目の前に現れ、3人の戦闘が始まってしまうのだが・・・。以上、前半の内容を紹介しました。この映画は忍者映画には少し珍しく、かなり哀愁漂う作品となっています。まさしく中国映画の典型的作品といえるでしょう。所々に出てくる中国風の音楽がその哀愁さをより一層高めています。

 個人的に驚いたのは、K-1ファイターの魔裟斗さんが出演されていたことです。さすが格闘家だけあってアクションシーンはとても見ごたえがありました。魔裟斗さんの高い身体能力と端正な顔たちは忍者役にぴったりなのかもしれません。中国語もかなり練習されたのでしょう、まるでネイティブのように流暢に聞こえました。
  
 この映画自体は中国で撮影されていますが、映画の設定として、伊賀・甲賀忍者が登場していること、登場人物の何人かは菊池博士・響・虎大介といった日本風の名前がつけられていること(もちろん映画の中では中国語読みになっています)など、日本要素を一部取り入れたものになっており、初見では多少戸惑う部分があるかもしれません。しかし慣れれば何の違和感もありません。むしろ日本文化と中国文化の融合作品として、とても面白く見ることができるのではないでしょうか。

 一つだけ笑ってしまったのは、アクションシーンにおけるくノ一の衣装がとてもカラフルに仕上がっていたことです。響は赤色、少霊は緑色といったように、遠くから見ても一発で特定できそうな色合いになっており、「戦隊ヒーローかよ!」と突っ込んでしまいそうになりました。このように全く忍ぶ気配を感じられない二人ではありますが、この服の色が最後に重大な意味をもたらします。どんな意味をもたらすのか。それはぜひ映画をご視聴下さい。

 中国映画において、伊賀・甲賀忍者をモチーフにした作品は数少ないと思います。日本の忍者映画しか鑑賞してこなかった方にとっては、今までの忍者映画の価値観、世界観を変えるような、そんな刺激的な作品に感じるかもしれません。多くの人に見て頂ければと思います。

 以上で今回のレビューを終わります。次回はレビュー③の時も少し紹介しました「AVN/エイリアンVSニンジャ」(2011年、監督:千葉誠治)をレビューしたいと思います!(院生 郷原記)