国際忍者研究センター

三重大学では、伊賀地域の発展のために、
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(エッセイ)「鈴木千惠子『杞憂に終わる連句入門』(文学通信、2020)」 (吉丸雄哉)

2020年07月03日

 近世文学研究者の鈴木千惠子さんから新著『杞憂に終わる連句入門』(文学通信、2020・6)を頂戴した。鈴木さんとは関東にいたころ浮世草子研究会などでご一緒してからの知り合いである。私は俳句はほとんど詠まないものの連句が好きで、授業で学生に教えては無理矢理連句を一緒に巻かせるという落語「茶の湯」のようなことをやっている。鈴木さんも私の連句好きを知っていて、今年の年賀状では「いつか連句を一緒に巻きましょう」と書いてあった。鈴木さんは私と違ってちゃんと連句を学んで「数十年」(本人の弁)続けてきた大ベテランである。『杞憂に終わる連句入門』ではどういう基準で「付け」ていけばいいのか、またどうやって捌いていけばいいのか、具体的に書いてあって参考になる。それもただ勉強になるだけでなく、のびのびと楽しく一座で詠んでいることがわかるのがよい。『杞憂に終わる連句入門』とはぴったりの題名である。連句用の歳時記『十七季』(三省堂)が出回っている限りらしく安定して手に入らないので、人数が多い授業では連句をやっていないが『杞憂に終わる連句入門』には素敵な句も多いので読みを中心として授業で教科書として使ってみたい。だが、「杞憂に終わる」とまでおっしゃるのだから、やはりこの本を手がかりに初心者に連句を広めるべきだし、そこまで手を広げたくなる内容である。
 御礼状と一緒に芭蕉忍者説の検討を書いた『忍者学講義』をお贈りすることにした。最近は謹呈札ではなくて見返しに筆で相手と自分の名前を書くようにしている。それだけでは芸がないので与謝蕪村が「忍び」を詠んだ「甲賀衆のしのびの賭や夜半の秋」を書き加えた。今は夏で季節は違うがまあ仕方がない。

 このあとにこの句に解釈について長々と書いたのだが、あまりに長すぎるのでそれはまた別の機会に披露したい。(吉丸記)