国際忍者研究センター

三重大学では、伊賀地域の発展のために、
忍者の歴史や文化を研究し、その成果を発信しています。

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(学生通信)忍術書のどのページを見せると人は喜ぶのか?(院生 嵩丸)

2020年07月06日

 みなさまこんにちは!修士3年の嵩丸です。

 昨年度の大学院授業で印象に残ったものについて順次ご紹介している本シリーズですが、この蒸し暑い季節になってくると、昨年の6月~8月に三重大学付属図書館において催された「伊賀と忍者」の資料展示を思い出します。

 これは2019年6月20日(木)~2019年8月21日(水)の期間、三重大学附属図書館の1Fホールにおいて、伊賀の風土記や地図、忍術書、忍者関連の文芸書が展示された企画展示でした。展示の企画と制作は吉丸雄哉先生が行われるのですが、ある日の授業で「院生のみなさんにも資料の解説や解題を書いてもらいます。」と伝えられ、僕を含めて三名の院生で担当の割り振りが行われました。

 企画展示は、忍者関連はもちろんのこと、戦国時代や三国志関連のものは結構好きなので時間があれば見に行くこともありますが、まさかあの解題や解説を自分が書く日が来ようとは…!大変貴重な経験に嬉しい反面、本当に自分に務まるのだろうかと不安にもなりました。

 自分は忍術書関連の4点の資料の解説・解題を担当し、過去の先人たちが書いた説明文なども念のため一から疑ってかかります。いざ展示でアウトプットしようと思うと、「これまで一般的にはこう言われているけど本当にそうなのか?その根拠はどこにあるのか?」という点を突き詰めないと自信をもって解説が書けません。伊賀の風土記『伊乱記』に関する記述については、少し作者について疑義が生じたため、先生の知見もお借りしながらなんとか書き上げました。今現在も修士論文執筆でてんやわんやしておりますが、やはりアウトプットを意識すると研究にも実が入ります。

 そしてもちろん資料の展示ですから、特定のページを開いて展示することで、見に来てくださった方々に「お~!!」と言ってもらえないといけません。どのページが一番人の目を引くのでしょうか。資料のうち『老談集』については、それはもう「兵糧丸」一択なので迷いはなかったのですが、『萬川集海』と『忍秘伝』については挿絵も多く、なかなかに迷ってしまいました。

 これまで見てきた忍術書の展示での『萬川集海』では、大体が「水蜘蛛」の絵であり、ひと昔前であればハットリくん世代の大人たちは「あの水蜘蛛が本当に忍術書にあったのか!」と感動したでしょうが、今18~22歳くらいの大学生がハットリくんを知っているはずもありません。その年代に受け入れられている忍者イメージといえばおそらく「NARUTO」。NARUTOでは武器として苦無が頻繁に登場しており、そちらの方が興味を引くだろうな、と思い、苦無のページを堂々と広げてやりました。果たしてこれが正解だったかどうかは全くわかりませんが、吉丸先生曰く展示は好評だったようです。(これはもちろん先生や展示を行った学生のみなさまの努力の賜物ですが…)

 これまでなんとなく見ていた企画展でしたが、見ていると「わかってるね~」と思わせられる展示に出会います。企画側の苦労と責任の重大さが体験できる貴重な機会に携わらせていただき、非常に勉強になった演習でした。国際忍者研究センターが手掛ける全国の忍者を調査するプロジェクト「忍プロ」の調査が一定以上の成果が見られた暁には、ぜひとも忍者関係史料だけを集めた大規模特別企画展などをやって欲しいです!(嵩丸記)

▼所蔵資料展示「伊賀と忍者」の目録はこちらからご覧いただけます
http://www.mie-u.ac.jp/topics/events/2019/06/post-399.html