国際忍者研究センター

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(学生通信)映画レビュー㉗「武田くノ一忍法伝 千代女」<2015年、監督:かわさきひろゆき>(院生 郷原匠)

2021年01月21日

 本日紹介する映画は、2015年に公開された「武田くノ一忍法伝 千代女」です。前回レビューさせて頂いた「くノ一関ケ原」(2010年)の監督、かわさきひろゆき氏による作品です。「くノ一関ケ原」については、以前レビューをさせて頂きましたので、もしよろしければご覧ください。

 プライムビデオによる平均評価は、★5中、★3つ半と、まあまあの評価でした。レビューの中には、「これは映画ではなくAVです」「ソフトポルノです」「初めて買った有料映画です」といったように、AV作品であることを主張する感想が多く、これといった酷評レビューはありませんでした。

 確かに濃厚な性行為シーンがいくつか見られるため、私自身も映画ではなくAVの一種であると感じました。プライムビデオには、「時は1561年、上杉との熾烈を極めた戦いで、武田勢は軍師・山本勘助や信玄の弟・信繁など、錚々たる武将を失っていた。平生、〈歩き巫女〉として世を忍ぶ望月千代女(浅野えみ)もまた甲賀出身のくノ一で、愛する夫・望月盛時を失い、失意の中にいた・・・。太平の世を願う千代女、強い心で生きる彼女は女を捨て、信玄のためならばその裸体さえも惜しまなかった・・・(以下長いので省略)」のように、ダラダラとあらすじが書かれてありましたが、ほとんど無視してもらって大丈夫です。

 ただ前回の「くノ一関ケ原」の時に比べれば、SEXシーンや卑猥な行動は遥かに減っており、わずかながらストーリーやキャラクターを重視している印象を受けました。望月千代女に助けられたことでくノ一になることを決意した、「かすみ(さくらゆら)」という少女の成長を多少ながら描いていたり、前回ではあり得なかった、剣を使って敵と戦う描写があるなど、忍者映画の土台は多少できていたのではないかと思います。それでもかなりツッコミどころはあります。しかし前回の「くノ一関ケ原」こともあったので、なぜかとても感動してしまいました。

 ちなみに望月千代女については、忍者の世界では何かと話題になる人物であり、一般のゲームや漫画にもしばしば登場します。信濃国望月城主・望月盛時の妻で、夫亡きあとは武田信玄に仕え、普段は歩き巫女として、諸国を回って情報収集に努めたくノ一であると巷では知られています。この説については、時代考証家の稲垣史生氏が、著書『考証日本史』(1971年、人物往来社)の中で発表したことを初出としているのですが、現在では、その説は単なる憶測にすぎず、実際の史実であったかどうかは疑わしいというのが定説になっています。海外においても、一部のファン層には知られているようで、海外で開かれた忍者講座において、望月千代女に関する質問もあったようです。

 そんな望月千代女を題材にした作品を撮った監督のかわさきひろゆき氏は、余程のくノ一ファンであると思われます。たくさんのくノ一映画が巷に広がっていますが、彼女を題材にした作品はあまり多くありません。その点において本作品は、数ある忍者映画の中でも貴重な存在なのではないでしょうか。ご興味のある方はぜひご鑑賞下さい。

 以上で今回のレビューを終わります。次回は「下忍 赤い影」(2019年、監督:山口義高)をレビューしたいと思います!(院生 郷原記)