- ホーム
- ブログ
(エッセイ)忍者映画の見どころ(吉丸雄哉)
2021年06月14日
今年度も教養教育の忍者学の講義は、対面での試験を行えないので、レポートを提出してもらうことにした。映画、マンガ、小説でそれぞれフォーマットに沿ったA4で1枚のレポートを今月からひと月ずつ提出してもらうことにし、すでに「映画」のレポートを締め切ったのだが、63人登録しているので読むのが一苦労だった。こういうのを墓穴を掘るというのだろう。
フォーマットが「フォーカス」「ダウト」という細部を検討する項目があるせいか、非常に細かく作品を見て、ツッコミを入れているレポートが多かった。
ツッコミの内容は「本当にそういうものだったのか?」「そういう忍びが実在したのか?」というものが多く、それは忍たま乱太郎の映画のようになにか根拠がありそうな作品だけでなく、紀里谷和明監督の『GOEMON』のようなほとんど史実に即していない作品も該当した。
私自身はなにか時代劇を見ていて、それが史実どおりかはほとんど気にしない。これは、時代劇がいろいろなお約束で成り立っていることを知っているのもあれば、歴史的再現から遠い歌舞伎を見慣れているのもあるだろう。いろいろと史実どおりか学生が気になるのは、私の授業内容が現在広まっている忍者像が造られたものであると教えるためかもしれないが、私の授業とは無関係に時代劇というくくりが必然的に史実に近いか遠いかという評価軸を引き寄せてしまっているというか刷り込まれてしまっているように感じる。
近衛十四郎の『忍者狩り』(1964)も千葉誠治監督の『忍者狩り』(2015)もレポートで触れられていた。同じタイトルでもあり、どちらも忍者映画の時代劇だが、単なる時代劇ではないくくりが必要なのではないだろうか。(吉丸記)