国際忍者研究センター

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(学生通信)映画レビュー㊳「関ヶ原」<2017年、監督:原田眞人>(院生 郷原匠)

2021年06月15日

 本日紹介する映画は、2017年に公開された「関ヶ原」という映画です。天下分け目の関ヶ原の戦いを描いた作品です。監督の原田眞人氏は、この他にも「日本のいちばん長い日」(リメイク・2015年)や「検察側の罪人」(2018年)といった作品を撮られています。

 プライムビデオでの平均評価は、★5中、★3と微妙な評価でした。「写実的で迫力がある」「重要な歴史ドラマ」といった高評価レビューもありましたが、「悲しくなる出来栄え」「つまらない」「なにこれ」といった酷評ばかりが残されていました。

 近江国(現在の滋賀県)に生まれた石田三成(岡田准一)は、寺の雑用係として働いているところを、偶然立ち寄った武将・豊臣秀吉(滝藤賢一)によって取り立てられ、秀吉の部下となりました。後に秀吉が天下統一を成し遂げますが、その頃には、三成は大名に出世しており、秀吉に忠義を尽くす家臣として名を馳せていました。また秀吉の家臣には、後に江戸幕府を開く、徳川家康(役所広司)もいました。彼は天下取りの野望を密かに秘めていたのです。そんな中、秀吉が病によってこの世を去ります。秀吉没後は大老・前田利家(西岡徳馬)が政務を執っていましたが、利家も亡くなると、いよいよ家康は天下取りに向けて動き出します。三成はそれに立ち向かうべく、上杉家家臣・直江兼続(松山ケンイチ)と相談し、家康を討つことに決定します。そしてついに慶長5年(1600)9月15日、関ヶ原にて合戦の幕が開くのです・・・。以上ストーリーの前半をご紹介しました。

 本作は、昭和39年(1964)7月~昭和41年(1966)8月にかけて『週刊サンケイ』にて連載された、司馬遼太郎『関ヶ原』を原作としています。司馬作品の映画化は、平成11年(1999)公開『梟の城』(監督:篠田正浩)以来、18年振りとなります。『梟の城』については、忍者が主人公の作品として有名なので、また機会を見つけてレビューしたいと思っています。

 今回、石田三成に仕える忍者として、「初芽」(有村架純)というくノ一と、「赤耳」(中嶋しゅう)という忍者が登場します。両者は伊賀出身の忍びで、初芽は自害しようとしていたところを三成に助けられ、三成の家臣となります。赤耳はいつの間にか家臣になっていました。初芽は、三成の愛人という設定になっています。

 赤耳については、関ヶ原の戦いにおいて、家康を斬り付けようとしたところを家康の忍びに捉えられ、あっさりと殺されます。そして初芽は、目立った戦闘シーンはなく、途中捕虜になっており、関ヶ原の戦いにおいても、山の中を駆け巡るだけで特に何もしていないのです。正直なところ、両者は映画に登場してもしなくても、何も問題ないように感じました。もう少し忍びの活躍の機会を与えてほしかったです。

 ちなみに史実としての石田三成の忍びは、具体的なことは明らかになっていないものの、近松茂矩著『甲賀忍之伝未来記』という史料に、「石田三成カ忍ハ悉ク用ヲ誤リテ不中ス、故ニ大敗滅亡シヌ」という記述があり、三成の忍びが関ヶ原の戦いで大敗したことが分かります。一方の家康は忍びを上手く使ったと書かれています。まさに忍びを上手く制すものは天下を制すということでしょうか。

 また関ヶ原の戦いの前哨戦として「伏見城籠城戦」というものがあり、ここでは甲賀出身の武将・山岡道阿弥の呼びかけで、甲賀忍び100人ほどが伏見城で籠城し、石田三成軍を足止めしたという逸話が残っています。史実かどうか不明ですが、非常に興味深い出来事です。映画でもこの籠城戦を描いてほしかったと思っています。

 ひとまず今回の作品は、忍者は抜きにして、迫力ある関ヶ原の戦いを鑑賞することができます。高性能のCGを用いた緊迫感ある映像を見られるので、ご興味のある方はご覧頂ければと思います。

 以上で今回のレビューを終わります。次回は「Relic~tale of the last ninjya~」(2017年、監督:藤沢文翁他)をレビューしたいと思います!(院生 郷原記)