国際忍者研究センター

三重大学では、伊賀地域の発展のために、
忍者の歴史や文化を研究し、その成果を発信しています。

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(学生通信)キャンプ流忍術修行⑤ (院生 河村昌樹)

2021年06月15日

 私の勤務している施設は自然の中にあるため、いろいろな生き物と出会います。
 例えばシカなどは毎日施設にやってきて木々の葉を食べていますし、今の季節はツバメとコシアカツバメが仲良く玄関に巣を作っています。近くの川にはオオサンショウウオも棲んでいるので、時折ハイキングに行った子どもたちがオオサンショウウオを見つけたと嬉しそうに話してくれます。
 都会に住んでいる子どもたちにとっては豊かな自然に直に触れる事は何よりも大切なことで、これからもその自然を守らないといけないのですが・・・
 それでも・・・ なかなか共生しにくい生き物もいます。
 スズメバチやチャドクガ等の危険な虫たちです。
 スズメバチの仲間(キイロスズメバチ、コガタスズメバチ、オオスズメバチ等)は、夏の終わりから秋にかけて凶暴性が増し、人が巣に近づき過ぎると襲ってきます。
 私の施設でも以前利用者がキイロスズメバチの巣に知らずに近づいて数人が刺される事故がありました。他の施設に勤務していた時もハイキングコースを100名ぐらいが歩いて80人位が通過した直後、オオスズメバチが人間を襲う事故がありました。きっとたくさんの人が歩いた足音に怒ったのだと思います。
 そのためハチの巣を見つけたら駆除しに行くのですが・・・私も今まで巣の駆除作業中に3度刺されました。1回目は大学生の時で、スズメバチの怖さをわからずにトイレにあったスズメバチの巣に殺虫スプレーをかけて襲われました。
 今から考えると昼に無防備で近づき殺虫スプレーをかけるなんて・・・刺されて当たり前で、無知が故にバカな事をしたと思いますし、スズメバチには普通の殺虫スプレーが効かないことも知りませんでした。
 今でもその時に刺された激痛と、次の瞬間、無数のハチが顔の周りにいた恐怖は、忘れられません。刺された後、無我夢中で自分の頭に殺虫スプレーをかけながら走って逃げました。
 3回刺された経験から、キイロスズメバチは巣からある一定の距離以上離れると襲ってきません。ハチに刺された時はとにかく全力で逃げてください。その場にいるとスズメバチに何度でも刺されると共に、毒液をかけられマーキングされるので標的にされたいへんな事になります。
 それと、ハチの生態を理解するとわかるのですが、怒らせる前は巣の近くを通っても刺されることはあまりありません。また、餌を捕食するために飛んでいる働きバチは、刺激しなければ襲ってくることもありません。ハチを見て怖いからと手で振り払ったりすると逆に危険です。静かにその場を離れることが一番です。もし知らずに巣の近くに行ってしまった場合も最初は兵隊バチが威嚇のために飛んできます。それでも近づくとカチカチと威嚇行動をするのでこれが始まったら危険です。すぐに離れないと次は恐ろしいことになります。
 なので、ハチの巣を駆除する時はできるだけ怒らせないようにし、一撃必殺で行う事が大切です。それとハチの駆除は夜に行っています。夜になると全てのハチは巣の中に入っていますので昼間の駆除と違い、戻りバチの心配がありません。また夜はハチが緊急時以外飛ばないので巣の入り口に見張りの兵隊バチが数匹いるだけで近づきやすく、寝込みを襲うことになるので昼のように活発化していません。卑怯かも知れませんが、忍者も夜襲が得意だったと思いますが、夜襲をかけ一気に先制攻撃で勝負をつけないと恐ろしい事になります。
 ただ夜は人間も暗くて見えないので、巣に近づく方向と逆方向から電灯を照らし、照らしたらハチは明かりの方に飛ぶ習性があるので、昼間にしっかり下見をし、予め電灯を固定させ、電灯をつけたらその場からすぐ離れ、防護服を着けた別の人がスズメバチ専用のハチ駆除スプレーを巣の入り口に噴射させます。今はとても強力なスプレーが販売されており離れた位置から巣を狙うことができます。キイロスズメバチの場合は入り口が1カ所なので入り口にうまく噴射させることが出来ればそれで駆除できます。ただスプレーはすぐ無くなるので2本目も用意して近づきます。ホームセンターにもハチ駆除のスプレーが売っていますがよく見るとスズメバチ以外と書かれている物があるため、購入の際は気をつけてください。私は業務用のスプレーを購入しています。それと駆除する際は、防護服も着けて行っていますが、防護服も完璧ではなく服の上から刺される事もあるようで、ハチの巣駆除は非常に危険で一つ間違えば死亡事故につながります。
 できれば駆除業者にお願いしたい所ですが・・・
 繁忙期は連絡してもすぐに来てくれない事もあり、ハチの種類や巣の大きさ等を考え、自分たちで駆除できそうな時は、細心注意を払って行っています。
 20年位前からは刺されていませんが、若い時に3度刺されているので次ぎ刺されるとアナフィラキシーショックを起こす可能性もあります。夏になったらいつ駆除をしないといけないかわからないので、お医者さんにエピペンを処方してもらい備えたいと思っています。
 勿論、ハチも地球の大切な生き物で、生態系を維持していくためのも必要な存在であります。できれば駆除せず共生する事ができたら良いのですが・・・ 
 全国でハチに刺されて毎年多くの人が亡くなっています。不特定多数の人が訪れる施設では、人が通る場所にある巣を放置することは出来ず、やむを得ず駆除しております。
 ハチを自由に操る忍術があれば、ハチさんに山の中で巣を作ってもらい、共生できる未来が来ることを切に願っています。
 次回はチャドクガについて書きたいと思います。(院生 河村昌樹記)