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(エッセイ)第4回国際忍者学会研究会報告 (吉丸雄哉)
2021年12月17日
2021年12月11日(土)に第4回国際忍者学会研究会が昨年に引き続きZoomで開催された。対面のときは立正大学品川キャンパスをお借りしていた。コロナ患者の新規発生数はかなり減ったが、それでも会場をお借りして研究会を開くにはまだハードルが高い。
メリットもあって、前回と同様に国際忍者学会の中島篤巳会長が岩国から参加してくださり、貴重な発言のほか、所蔵の忍術書をみせてくださるなどは、東京開催ではありえなかっただろう。また、チェコ(だったと思う)の大学に留学中の方が早朝から参加してくださったのもZoom開催のメリットだったといえる。
発表内容も発表者の国籍や内容も国際色豊かで「国際」忍者学会の名にふさわしい研究会だった。
最初の発表の李徳洋「『万川集海』と中国古典の比較研究」は『万川集海』に記された中国古典の内容を丁寧に拾ったもの。中国古典が使われることの意義が最重要だが、それは発表を聞いた人の特典としてここには書かないでおく。問題としては、中国古典は何の本を読んでいたかである。『孫子』を例にとっても和刻本や注釈書などで100点以上ある。先行する兵学書を参考にしたかもしれず、また和漢の故事を収めた和製類書を参考にした可能性もあるからである。これを調べていけば一生の仕事になってしまうかもしれないが、まずは丁寧に本文を見ていくことでどのような中国古典が使用されているのかはっきりしたことにより、研究の足がかりができたように思える。
草野元斗「なぜアメリカ人は忍者を愛するのか?」は、アメリカンヒーローがキャラクターとして形成されはじめた1920年代から現代に至るまでアメリカ人の精神性をたどることで、アメリカにおいて忍者がどのようなヒーローとして表象され、かつ受け入れられていったかを明らかにしたもの。専門が英米文学の研究者だけあって、従来のアメリカの忍者分析では手の届かない部分が考察されていてよかった。発表はアメリカ国内の議論だけで論が成り立っていたが、質問にあった日本では非常に好かれているくノ一がアメリカではあまり取り上げられないのはなぜかという点や1980年代の日本の忍者の影響をもっと掘り下げるとどうなるかという点が煮詰まればさらに魅力的な論になると思う。質問者にレゴ ニンジャゴーの企画に関係している人がいて、どのような戦略でレゴ ニンジャゴーが開発・展開していったのか説明してくださったのも興味深かった。これは次の発表にも関係している。
ギョーム・ルマニョン「西洋における忍者イメージの進化」「フィクションと現実、双方からの忍者とスパイのイメージ比較」は、アメリカとは違ったヨーロッパにおける忍者イメージの成長を解き明かしたもの。『007は二度死ぬ』はたいへん有名だが、それ以前にフランスのスパイ小説・映画でがっつり忍者が扱われていたのには驚いた。また、西洋の戦争史における諜報活動が紹介され、忍者との比較で興味深かった。国際的な諜報研究が学問として成立していくならば、忍者がその一部として語られていくように感じた。
9月に行われた本大会も充実していたが、研究会も内容の濃いものだった。学会がこのように発展していることは運営者の一人としてたいへん喜ばしい。(吉丸記)