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(学生通信)映画レビュー56「忍びの者 続・霧隠才蔵」<1964年、監督:池広一夫>(院生 郷原匠)
2022年01月20日
本日紹介する映画は、1964年に公開された「忍びの者 続・霧隠才蔵」という映画です。映画「忍びの者」シリーズ第5作目であり、前回ご紹介した「忍びの者 霧隠才蔵」(1964年、監督:田中徳三)の続編です。監督は田中徳三氏から池広一夫氏に代わりました。池広氏は、他に「眠狂四郎 女妖剣」(1964年)や「座頭市千両首」(1964年)といった作品を撮られています。
プライムビデオの平均評価は、★5中、★4つ半と、これまたほぼ満点の評価でした。「異国情緒あふれる展開」「何度見ても飽きない」「明確なテーマと普遍性」など、高評価のレビューばかりで酷評はほとんど見当たりませんでした。
大坂冬の陣において豊臣方は完敗し、徳川家康(小沢栄太郎)の天下が確立しました。真田幸村(若山富三郎)は、霧隠才蔵(市川雷蔵)の案内で薩摩の島津家へと落ちのび、当主の家久(五味龍太郎)、隠居の義弘(二代目澤村宗之助)は彼らを受け入れ、打倒徳川政権を打ち立てます。しかし島津家の家臣であった、自源流師範・海江田一閑斎(浅野進治郎)と茶の宗匠・宗全(荒木忍)が、その陰謀を打ち明け、激怒した家康は、服部半蔵(伊達三郎)に才蔵と幸村の討伐を命じます。彼らは徳川の隠密だったのです。才蔵はそれを見抜き、海江田と宗全を自害させます。危機を感じた才蔵は、鉄砲を製造する必要性を感じ、良質な鉄砲を量産する種子島に出向きます。どうも種子島では、当主の種子島久尚(林寛)が、明の商人・竜飛(藤山浩二)と密貿易を行っている様子でした。また才蔵は、立ち寄った茶屋で、あけみ(藤由紀子)と真鶴(明星雅子)という2人の娘に出会います。才蔵は彼女達と打ち解けていきますが、その頃、すでに服部半蔵は薩摩に到着していたのでした・・・。以上ストーリーの前半をご紹介しました。
本作は、大坂夏の陣において、才蔵と真田幸村は生き延びており、才蔵の案内によって薩摩に身を隠していた、というありがちな設定になっています。もちろん史実ではありません。レビューにもありましたが、本作品は、異国情緒あふれる内容に仕上がっており、今までの「忍びの者」シリーズの中でも、異彩を放つ作品に仕上がっています。しかしながらこれまでと同様に「権力者とそれに翻弄される者たち」という構図は変わっていません。徳川家康に翻弄される家臣や忍びの様子が上手く表現されています。
ちなみに前回言及できませんでしたが、実際の大坂の陣において、真偽は不明ですが『伊賀者由緒書』や『伊賀路濃知邊』という史料に、伊賀忍びが隠密御用を働いたという記述が残っています。もちろんそれは霧隠才蔵ではありませんが、伊賀忍びが大坂の陣でも活躍していたかもしれないということで、非常に興味深い事例であるといえます。
ちなみに鹿児島地方では、戦国時代に「山潜り」と呼ばれた忍びが暗躍していたこと、幕末期に西郷隆盛の下で忍びが諜報活動を行っていたことが明らかになっていますが、その詳細についてはそれほど明らかになっておりません。しかしながら大藩であった薩摩藩に何らかの忍び組織が存在していたことは間違いないでしょう。今後の忍者研究の重要テーマになってくると思いますので、もし関連する史料などございましたら、国際忍者研究センターにご連絡頂ければ幸いです。
以上で今回のレビューを終わります。次回は「忍びの者 伊賀屋敷」(1965年、監督:森一生)をレビューしたいと思います!(院生 郷原記)