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(学生通信)映画レビュー58「忍びの者 新・霧隠才蔵」<1966年、監督:森一生>(院生 郷原匠)
2022年02月09日
本日紹介する映画は、1966年に公開された「忍びの者 新・霧隠才蔵」という映画です。映画「忍びの者」シリーズ第7作目です。監督は、前回と同じく森一生氏です。森氏は、他にも「続・座頭市物語」(1962年)や「座頭市御用旅」(1972年)など、座頭市関係の作品を多く撮られています。
プライムビデオの平均評価は、★5中、★4つ半と、ほぼ満点の評価でした。レビュー数は4件と少なく、「青春を思い出す」「マンネリ感がある」「才蔵強すぎ!」「やっと良い作品に出会えた」といったものがありました。どちらかといえば高評価の感想の方が多かったです。
大坂夏の陣後、徳川家康(小沢栄太郎)は、将軍職を息子の秀忠(南条新太郎)に譲り、自らは大御所として駿府城で政務を執っていました。家康は、天下を揺るぎないものにするために、幕府の意向に従わない伊賀忍者の残党を根絶やしにする必要があると考え、配下の風魔忍者に対し、「伊賀忍者狩り」を行うよう命じ付けます。一方その頃、伊賀忍者の霧隠才蔵(市川雷蔵)は、仲間の音羽弥藤次(内田朝雄)やくノ一の茜(藤村志保)らと共に、家康暗殺の機会をうかがっていました。収集した情報をもとに、駿府城内に忍び込みますが、風魔忍者の頭領・大十郎(田村高廣)に見つかってしまいます。才蔵は身の危険を感じましたが、大奥の女主人である弥生(楠侑子)によって助けられます。彼女は家康に滅ぼされた長宗我部盛親の姪であり、家康を滅ぼすために駿府城に出仕しているとのことでした。そこで弥生は、正式に伊賀忍者の仲間達と面会し、共に家康暗殺への誓いを立てます。そんなある日、暗殺計画が家康に漏れてしまい、才蔵らのアジトが家康の家臣によって襲撃されてしまうのでした・・・。以上、ストーリーの前半をご紹介しました。
さて今回の作品は、前回の続編ではなく、違う世界線での初代・霧隠才蔵のお話です。天正伊賀の乱における伊賀忍者の生き残りとして、真田幸村に仕えることなく、どんな権力にも屈しない一匹狼の霧隠才蔵を描いています。今回の才蔵は、先の作品と比べて少し凶暴な性格のように感じました。また家康配下の忍者も、伊賀・甲賀忍者ではなく、風魔忍者という設定になっています。「伊賀忍者VS風魔忍者」という、これまた忍者映画によくあるストーリーです。
ちなみに前回、「Relic~tale of the last ninja~」(2017年)という新感覚・音楽朗読劇をレビューしました。この作品は風魔忍者が主役の物語で、江戸期において不必要となった忍者の没落を描いた悲哀感あふれる物語となっていますが、本作品はむしろ逆で、風魔忍者は家康から重宝される存在となっています。これまた非常に興味深いと思いました。ちなみに史実においては、家康は風魔忍者を用いていません。
風魔忍者については、頭領の「風魔小太郎」が特に有名です。異形の風体として知られ、200人ほどのラッパ(北条氏に仕えた忍び)を抱えていたといいます。今回登場する「風魔大十郎」は、小太郎をモチーフに作られているのでしょう。前回もご紹介しましたが、平山優氏が『戦国の忍び』(角川新書、2020年)で風魔について詳しく取り上げておりますので、そちらもご覧頂ければと思います。
しかしながら、この「忍びの者」シリーズは、どれを見ても全くハズレがありません。昨今の忍者映画と格段の差があります。映画がまだ白黒だった時代は、ビジュアルで勝負できないため、とにかく脚本重視でした。それ故忍者映画の分野においても、このように重厚な作品が生まれたのでしょう。
以上で今回のレビューを終わります。次回は「新書・忍びの者」(1966年、監督:池広一夫)をレビューしたいと思います! (院生 郷原記)