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(学生通信)武田家の家訓に見られる武略のうそと情報収集(院生 ペトロフ・キリル)
2023年05月26日
武田家は戦国時代に最も武力を持っていた武家の一つとして知られています。多くの他武家と同じように、武田家にもその家の価値観と道徳を説いている家訓がありましたが、他の武家の家訓に比較すれば、99箇条でできており、非常に長いです。その内容が幅広くて、お屋形および家臣に対する正しい振る舞いと礼儀作法、武具の用意、武勇、武芸など、様々な事柄について詳しく説いている書物です。
戦国大名には、自分の武家の勢力をさらに強めさせて、領地もさらに敵から取って、国を守って有効的に支配するためには、敵を騙すこと、そして敵を知ることが非常に重要なことでした。そのため、戦国武将は忍びの者、あるいは物見をしばしば使いました。武田家もそれを重視したのは、同家の家訓のいくつかの箇条に見えます。例えば、うそをつくことについてこのように述べています:
武略のうそは格別
あらゆる場合に、うそをついてはならない。神のお告げにも、「正直なものは、一時は報いられないことがあろうとも、結局は神仏のご加護をいただけるものである」とされている。ただし、合戦の場にあっては、そのときの状態によるべきであろう。『孫子』には、「充実した敵を避けて、敵の虚をつけ」と教えている。 吉田豊編訳『武士の家訓』(徳間書店、1972)、193頁
以上のことで、武家の中で、日常生活の中でうそをつくのが批判されていますが、戦争の場合には、自分の国、主人、家族などを守るために、うそをつくのが許されていることが見られます。
続いて、日本のことわざと中国の古典を引用しつつ、情報収集についてこのように述べています:
情報収集を怠るな
自国、他国の動向につき、善事、悪事とも十分注意して、くわしく知っておくこと。「よい話は広がらぬが、悪いうわさは千里の外まで広がる」ということわざがある。また『碧巌録』にも、「家の中の醜事を、外にひけらかすことはない」といわれている。 前掲書、209~210頁
以上のように、自国と他国の善悪を知っておくだけではなくて、他国に自国の短所を見せるのを、できるだけ避けるべきだとされていました。
敵にうそをつくことや、自国の善悪を逃さないこと、そして情報収集を行うことなどに際しては、武田家に務めていた透波(すっぱ)という、およそ200人の忍者の役目を果たしていた者たちが良く活躍していたと推測できます。こうした透波の努力は、武田信玄の戦場における多くの堂々とした勝利の背景の一つであったとも言えるでしょう。(院生 ペトロフ記)