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(学生通信)『忍者と玉秀斎 その16』(院生 四代目・玉田玉秀斎)
2023年06月08日
午前中に三重大学大学院の筆記試験を終えたところまで、前回書いた。
午後からはいよいよ面接試験だ。
開始までに1時間強の時間がある。
「よし、腹ごしらえをしよう」と教室を飛び出した。
外の空気が気持ちいい。
しかし、よく考えたら、どこに何があるのか何も知らない。
校門から試験会場までは昨日調査済みだが、それ以外は無知だ。土地勘がない。
「どこにいけばいいんだろう。とにかく歩けば、何かに行き当たるはずだ…」
テスト当日に絶対にしてはいけない無計画な行動にでてしまった。
歩き始めたが、何にもない。
大学の建物だけがただ続く。
よく考えたら、試験当日は休みの日だ。
大学構内はどこも閉まっていて当たり前だ・・・。
気づいたときには大学病院の敷地に入っていた。
「同じを道を戻れる自信はない。よしっ、あそこに大通りが見えるから、あそこまで行こう大通りなら何かあるはずだ」と国道まできたが、ここにもお店はない。
時間を見ると30分ほど過ぎていた。
「これはヤバい。何も食べずに戻ろうか」
そう思ったとき、目に飛び込んできたのが、ラーメン屋さんの看板だった。
「よしっ、ラーメンならすぐに出てくるし、冷えた身体を温めるにはちょうどいい」
と足取り軽く、ラーメン屋さんに入った。
すでに40歳を越えているのに、大学院の試験を受けているせいか、気持ちだけは大学生に戻ってしまったようだ。
メニューを見て、『大盛り唐揚げセット』を頼んでしまった。
出て来たラーメンと唐揚げをみて驚いた。
「これが学生街のラーメンか・・・」
筆記試験と面接試験の間の心落ち着ける時間は格闘の時間へと変わった。
時計を見れば時間もない。
学生時代に戻ったように、口の中にラーメンと唐揚げを放り込んでいく。
しかし、良かったのは最初の10分だけ。
どうやら、脳みそが異常事態に気づいた。頭の中の非常ベルが鳴り始めた。
「学生時代なら普通に食べられた量なのに、もうお腹がいっぱいだ。これから学生時代に戻るんだろ。食べろ。食べるんだ。食べきるんだ。これを食べると、学生時代に戻れるんだ。この後の面接試験もきっとうまくいく」
頼れるものは何でも頼る。
そして、遂にその時がきた。
「食べ終わった!!!勝ったぞ。僕は勝ったんだ」
しかし、喜んでいる間はない。
集合時間が迫っていた。
お腹をパンパンに膨らまして、ラーメン屋さんを飛び出した。
寒風の中、試験会場に急いだ。
その足取りの重いこと・・・。
「なんで、大盛りにしたんだ」
何度も後悔をしながら、やっとの思いで試験会場の自分の机に戻った。
いよいよ面接試験だ。(院生 四代目・玉田玉秀斎記)