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(エッセイ)戦国の城攻めと忍び(吉丸雄哉)
2023年06月12日
吉川弘文館より戦国の忍びを考える実行委員会・埼玉県立嵐山史跡の博物館編『戦国の城攻めと忍び ―北条・上杉・豊臣』が刊行された。
実は私も第Ⅲ部「これからの忍者研究」第二章「多分野研究からみた忍者研究」を執筆している。そのため5月末頃には献本をもらっていたのだが、奥付が2023年6月20日なので配本されるのはもっと先だと思っていた。たまたま6月3日(土)に名古屋のジュンク堂書店に寄ったところ、すでに並んでいたので驚いた。新刊本は奥付を基準に三か月半、取次から書店に委託されるので実際の刊行よりも奥付があとになるのが普通だが、まあまあ長く設定してあったということだろう。
2021年7月からの埼玉県立嵐山史跡の博物館の企画展「実相 忍びの者」とそれに関係する博物館セミナー「戦国の忍びを考える ―武蔵国での戦いをめぐって―」(2021年9月19日)が本書のもとになっている。
下記の吉川弘文館のURLから詳細もわかるし注文もできる。
http://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b623089.html#pagetop
目次はぎゅっとつまっていて、全貌がわかりにくいので立ち読みを利用して眺めてみて欲しい。
第Ⅰ部「城攻めと忍び」は主に永禄五年の葛西城と天正二年羽生城の合戦における忍びの働きを記したもので、第Ⅱ部「籠城戦と特殊武器」は岩付(岩槻)城や八王子城から出土された特殊武器を多く取り上げている。忍者研究も軍記物などの2次史料から文書などの1次史料にもとづいた研究へと深化しているが、本書では城跡や出土品など考古学的な視点が加わっていることが大きい。本書のとりまとめをなさった岩田明広さんがもともともっと古い時代の考古学を専門となさっていたことがそのような視点が含まれる要因となったのだろう。
本書がとりあげる土製まきびしや石製平つぶてはNHK総合の歴史番組「戦国の忍び」(2022年4月13日放送)で再現・実験されて大きな反響を呼んだ。
番組に興味を持たれた方は是非本書を手に取って欲しい。242頁で税抜2000円なので忍者に興味のある方は騙されたつもりで買ってもらいたい。
ここが現時点での忍者研究の最前線であり、今後この本を抜きに忍者研究は語れないのは間違いない。(吉丸記)