国際忍者研究センター

三重大学では、伊賀地域の発展のために、
忍者の歴史や文化を研究し、その成果を発信しています。

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(エッセイ)いわゆる「フェイクニュース」について

2018年07月30日

「忍者は年収8万5000ドル(940万円)だが、伊賀ではなり手が足りない」――。こんなニュースがアメリカのラジオ放送をきっかけに世界に拡散した。このニュースによって、世界各国の忍者希望者からの問い合わせが、伊賀市役所、観光協会、国際忍者研究センター、そして私のところにまで寄せられた。岡本栄市長は緊急記者会見を開いて、「これはフェイクニュースで、伊賀市は忍者を募集していない」と強調した。

このニュースのきっかけとなったのはアメリカのラジオ放送で、インタビュアーは伊賀市、上野商工会議所、伊賀流忍者博物館、そして三重大学国際忍者研究センターなどで取材を行い、それをもとに放送した。放送では忍者のあれこれについて話しているが、記事の見出しは「Japan’s Ninja Shortage(日本の忍者不足)」で、その点が強調されてさまざまのメディアが取り上げて騒動が大きくなった。訂正したニュースもBBCなどで報道され、結果的には「伊賀忍者」の存在を世界に広めることとなった。

この一連の騒動から学ぶことはたくさんあるが、一番驚いたのはNinjaに対する関心の高さである。これだけ潜在的に忍者に関心があるのだから、これをどのように観光に活かしていったらよいか、忍者観光に取り組むところは真剣に考えていく必要があろう。忍者の職務の本質は、情報の収集・伝達にあり、そのための術は、忍術書にたくさん書かれている。情報をどのように操るか、「忍者の聖地 伊賀」だからこそしっかり戦略を練っていかなければならない。(山田記)