国際忍者研究センター

三重大学では、伊賀地域の発展のために、
忍者の歴史や文化を研究し、その成果を発信しています。

ブログ

 

(学生通信)その人を何をもって忍者とするのか問題(院生田中(仮))

2019年01月22日

あけましておめでとうございます。修士1年の田中(仮)です。

正月休みは実家に帰省してたっぷりとお休みさせていただいていたのですが、1月4日にアップされたAERA.dotのこんな記事を読みました。先月創刊された「歴史道」という雑誌の抜粋記事です。この出版不況の中、歴史系の大衆向け雑誌が創刊されたのは嬉しいですね!

【最強忍者ベスト10】 “鬼の半蔵”を追うのは、北条家への義理を果たしたあの忍者

https://dot.asahi.com/wa/2018122700105.html

 

いわゆる“実像”の忍者を「忍術」「裏面性」「知略」「指導力」「義理」の5つのパラメータから点数をつけ、その総合点によってランキング付するという記事となっています。服部半蔵・風魔小太郎・百地丹波・藤林長門・蜂須賀小六・加藤段蔵・滝川一益・果心居士・石川五右衛門・山岡景友の十忍がランクインしていますね。

歴史群像シリーズなどのムック本などの忍者知識で育った僕としては、こういうのは昔からワクワクしながら読んでいたタイプの人間でした。ただ、三重大学院に入って忍者学の専攻をしてからというもの、どうにもこうにも思考回路が「うーん、これって”実像の忍者”と言っていいんだろうか…」という疑問が湧いてくるようになってしまいました。

もちろん、大衆向けのムックですし楽しければ全然イイと思うんですが、例えば滝川一益は甲賀出身なだけであり、忍者と言っていいのだろうか…とか、加藤段蔵も実在しないという研究成果もありますし、山岡景友も忍者達を管理していただけで忍者とまで言えないんじゃないか…などと、”実像の忍者”って言われてしまうとどうしてもなんか引っかかるんですよね。誰も彼もが忍者だと思っていてロマンに浸れていた頃が懐かしいです(笑)

今後忍者研究に取り組むにあたって、「忍者の定義」をもう少し細分化・類型化できるようにしたいと思っています。国際忍者学会でも、現状はあえて忍者の定義をしていません。今は三重大学の提唱した、創作も含めた狭義の「忍者」と、歴史上実在した「忍びの者」の区分けくらいでしょうか。この「忍びの者」の中にも「諜報を行う者」「夜討する者」「幻術使い」「盗賊」「これらを管理する武士」など様々なタイプが存在しています。一言で「忍者」といっても、そこには無限の可能性が含まれているわけなのです。

ここが忍者のおもしろいところなのですが、いつか国際忍者学会の部会などで「現在から過去まですべての忍者を分類してタイプ分けしてみよう!」みたいなディスカッションして、まとめて提唱とかできたらなぁ〜と妄想していたら正月休みが終わりました。本年もよろしくお願いいたします!(田中(仮)記)