国際忍者研究センター

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(学生通信)「孫子兵法」の「用間編」について①(院生 リトクヨウ)

2020年06月18日

 皆さん、こんにちは、院生一年生のリトクヨウです。
 これから、「用間編」について、四回で、詳しいお話したいと思います、どうぞよろしくお願いいたします。

 孙子曰:凡兴师十万,出征千里,百姓之费,公家之奉,日费千金;内外骚动,怠于道路,不得操事者,七十万家。相守数年,以争一日之胜,而爱爵禄百金,不知敌之情者,不仁之至也,非人之将也,非主之佐也,非胜之主也。故明君贤将,所以动而胜人,成功出于众者,先知也。先知者,不可取于鬼神,不可象于事,不可验于度,必取于人,知敌之情者也。

 孫子曰わく、
 凡そ師を興こすこと十万、師を出だすこと千里なれば、百姓の費、公家の奉、日に千金を費し、内外騒動して事を操[と]るを得ざる者、七十万家。相い守ること数年にして、以て一日の勝を争う。而るに爵禄百金を愛んで敵の情を知らざる者は、不仁の至りなり。人の将に非ざるなり。主の佐に非ざるなり。勝の主に非ざるなり。故に明主賢将の動きて人に勝ち、成功の衆に出ずる所以の者は、先知なり。先知なる者は鬼神に取るべからず。事に象るべからず。度に験すべからず。必らず人に取りて敵の情を知る者なり。

 およそ十万規模の軍隊を編成し、千里の彼方に外征するとなれば、民衆の出費や政府の支出は、日ごとに千金をも消費するほどになり、遠征軍を後方で支えるために朝野を問わずあわただしく動き回り、物資輸送に動員された人民は補給路の維持に疲れ苦しんで、農事に専念できない者たちは七十万戸にも達する。こうした苦しい状態で、数年にもおよぶ持久戦を続けたのちに、たった一日の決戦で勝敗を争うのである。それにもかかわらず、間諜に爵位や俸禄や賞金を与えることを惜しんで、決戦を有利に導くために敵情を探知しようとしないのは、不仁の最たるものである。そんなことでは、とても民衆を統率する将軍とはいえず、君主の補佐役ともいえず、勝利の主宰者ともいえない。だから、聡明な君主や知謀にすぐれた将軍が、軍事行動を起こして敵に勝ち、抜群の成功を収める原因は、あらかじめ敵情を察知するところにこそある。事前に情報を知ることは、鬼神から聞き出して実現できるものではなく、天界の事象になぞらえて実現できるものでもなく、天道の理法とつきあわせて実現することもできない。必ず、人間の知性によってのみ獲得できるのである。

 これが「用間編」の第一段落です。「作戦編」と同じ、最初は戦争がその国の人力、お金などに大きな影響を与え、百姓の社会経済生活にとても負担をかけた。それと比べ、スパイに使用する金などは本当に少ないというのである。もし将軍はお金を惜しんでスパイを用いなく、「敵を知らない」ことで敗北になったら、このような人は「不仁の至りなり」である。孫子は「お先で敵を知り」こそ、いつも戦争で勝つわけだと思う。 「知」というのは、自分を知っているほか、敵をも知るべきだ。それに、敵の状況を把握するには「鬼神、天界の事象、天道の理法」などに従うことなく、人の次第だということである。これが現代人の私たちから見れば当たり前なことだが、二千年前の孫子はこんな思想も持っているのは深く感心された。

 今回、これでお終わりしたいと思います、私は今「孫子兵法」を読んで、いろいろ勉強しています。これからもどうぞよろしくお願いいたします。(院生 リトクヨウ記)