国際忍者研究センター

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(学生通信)映画レビュー⑤「AVN/エイリアンVSニンジャ」(2011年、監督:千葉誠治)

2020年07月08日

 本日紹介する映画は、2011年に公開された「AVN/エイリアンVSニンジャ」という映画です。2回目のレビューの時にご紹介した「忍者狩り」の千葉誠治監督による作品です。「忍者狩り」の4年前に撮られた作品で、千葉監督にとっては初の忍者映画作品となります。

 プライムビデオによる平均評価は、★5中、★3です。「テンポがとても良い」「良いほうのB級映画」「面白かった」といった高評価レビューが見られる中、一部、「学芸会レベル」「需要が意味不明」「寒い」といった超酷評レビューもありました。

 戦国時代、宇宙から飛来した未確認飛行物体が伊賀の里に不時着します。その様子を探るために、ヤマタ(三元雅芸)・リン(肘井美佳)・ジンナイ(柏原収史)らを中心とする忍者集団を送り込みますが、エイリアンのあまりの強さに忍者集団は苦戦を強いられます。エイリアンは鋭い牙と爪で忍者達を八つ裂きにしたり、体内にエイリアンベビーを寄生させて自我を破壊したりといった、常識では考えられないような異様な攻撃で忍者達を苦しめます。果たして忍者達はエイリアンを倒せるのでしょうか・・・。といったように、ストーリーとしては題名通り、忍者がエイリアンと戦うといった内容です。R16指定になっているほどグロい映画となっておりますので、見る際には注意する必要があります。本当に吐き気を催すシーンがいくつかありました。

 凶暴な異星人をモチーフにした映画といえば、「プレデター」(1987年、監督:ジョン・マクティアナン)や「エイリアン」(2004年、監督:リドリー・スコット)といった作品が非常に有名で、それらをリメイク、パロディ化したものが、現在でもハリウッドを中心に数多く制作されています。今回の作品もその流れに乗って作られたものと思われます。忍者とエイリアンの組み合わせは斬新であったのか、日本で公開後、アメリカでリメイク版が上映されています。一部のファン層にはたまらない作品となっているのでしょう。

 さて、この映画の見どころは、やはり何といっても忍者とエイリアンの戦闘シーンです。エイリアンはエイリアンらしい独特の気持ち悪い攻撃を繰り広げ、忍者は忍者らしい豪快な剣術と体術でエイリアンを圧倒します。「忍者狩り」の時もそうでしたが、千葉監督のアクションシーンを撮る技術は本当に桁違いでありまして、全ての映画のアクションシーンは全て千葉監督が撮ればいいのにと真剣に思ってしまうほどでした。

 戦闘シーン以外で印象に残ったのは、ネズミ(土平ドンペイ)という忍者の存在です。彼は忍者とは思えないような超臆病者で、エイリアンとの戦闘シーンでもすぐに逃げ出そうとします。しかし一方で道具を作ることに長けており、彼の作ったいくつかの道具が、映画の後半では大きな助けとなります。この逃げてでも生き抜こうとする精神、バラエティ豊かな忍具を作ることができる才能は、史実の忍者に近いものがあるでしょう。映画の中のネズミは主人公を引き立てる存在でしかありませんが、史実の忍者を考える上で、彼の存在は非常に重要となってきます。

 そしてもう一つ印象に残ったのは、くノ一のリンです。千葉監督作品に登場するくノ一はやっぱりどうもエロティックであります。前回の「忍者狩り」でご紹介したケイ(黒川芽以)は、肌を豪快に露出した真っ黒な忍者服を身にまとっており、SMクラブの女王様のような印象を受けました。それを受けて今回のリンは、肌は露出していないけれども、ボディラインを強調した真っ黒な忍者服を身にまとっており、加えてブラジャー型の謎の甲冑をつけていました。別のタイプの女王様といえるでしょう。アクションシーンにおいても開脚姿を全面的に映し出すなど、これだけで確実に年齢制限行きになってしまうようなシーンがたくさんありました。一人で見る分にはとても楽しめますが、家族やカップルの間で見る時は注意する必要があるでしょう。

 一方で改善点を挙げるとするならば、俳優の演技力だと思います。大半の人物がセリフを棒読みしているように感じました。このような中途半端な演技が「学芸会レベル」「つまらない」といった酷評レビューを生む大きな原因となってしまいます。アクションシーンが国宝級である分、少しもったいないと感じてしまいました。

 しかし兎にも角にも、一風変わった忍者映画を見たい!という方にとっては、非常に楽しめる内容となっていることは間違いありません。グロ耐性のある方は、ぜひ一人でご覧いただければと思います。

 以上で今回のレビューを終わります。次回は「RE:BORN リボーン」(2017年、監督:下村勇二)をレビューしたいと思います! (院生 郷原記)