国際忍者研究センター

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(学生通信)天時・地利・人和①(院生 リトクヨウ)

2021年05月21日

 みんなさん、「天時・地利・人和」とご存知でしょうか。軍事戦略によく出てきますが、「万川集海」において、その「凡例」には:「天時天父ヲ第五二置事天時不如地利地利不如ト先賢ノ教二元ツキテ也但天時ノ篇ノ中二忍術ノ専要タル」とかいてあります。さて、今回では、この「天時・地利・人和」について、かきたいと思いますが、よろしく。
 天時・地利・人和というのは孟子が書いた文章で、その原文を見てみましょう。

孟子曰:天時不如地利,地利不如人和。
三里之城,七里之郭,環而攻之而不勝;夫環而攻之,必有得天時者矣; 然而不勝者,是天時不如地利也。
城非不高也,池非不深也,兵革非不堅利也,米粟非不多也; 委而去之,是地利不如人和也。
故曰:域民不以封疆之界。固国不以山溪之険,威天下不以兵革之利;得道者多助,失道者寡助;寡助之至,親戚畔之;多助之至,天下順之。 以天下之所順,攻亲戚之所畔。故君子有不戦,戦必勝矣。
註:
天時:四季・寒暖・昼夜などのように、自然にめぐってきて人事にかかわりをもつ時。天の与える時機。
地利:地勢・地形上の便利。地の利。
人和:人々が互いになごやかな関係を保っていること。人の和。

現代日本語で訳したら、以下になる:
孟子はこうおっしゃった。
「天の与える良い機会は土地の情勢の有利さより素晴らしくはない。
土地の情勢の有利さは、人々の心の一致より素晴らしくはない。
三里平方の内城で七里平方の外城の敵を、包囲して攻めたが勝てない。
包囲して攻める際には吉凶を占い、必ず攻めるのにふさわしい、天の恵みと思える良い機会をうかがっているはずである。
それなのに勝てないのは、天の恵みと思える良い機会が地理を土地の情勢の有利さより素晴らしくはないからである。
城壁が高くないのではないのだ。
堀が深くないのではないのだ。
兵の武具が鋭くなく、硬くないのではないのだ。
食糧が足りないのではないのだ。
しかし、これを棄て去って、退却するということは、土地の情勢の有利さは、人々の心の一致による団結より素晴らしくはない。
それゆえ、『民を国境によって出入り規制することは不可能で、国境を山川の険しさによって守ることは不可能で、国々を軍事力で威圧することは不可能である。』という言葉がある。
正しい道理に適った者が、得られる援助が多い一方で、正しい道理を見誤っている者は、少ない援助しか得られない。
援助が少ない者というのは、結局親戚に背かれる。
一方、援助が多い者というのは、ついには世間までが合わせて動いてくれるのだ。
世間までが合わせて動いてくれることを用いて、親戚に背かれる者を攻めるものである。
だから、正しい道理に適った者は戦わない場合もある。
正しい道理に適った者が戦うなら必ず勝つだろう。」と。

ということで、解析は次回させていただきます。よろしく。(院生 リトクヨウ記)