国際忍者研究センター

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(学生通信)映画レビュー㊱「超高速!参勤交代」<2014年、監督:本木克英>(院生 郷原匠)

2021年06月02日

 本日紹介する映画は、2014年に公開された「超高速!参勤交代」という映画です。本木克英氏は、日本では比較的有名な映画監督であり、本作の他には、「超高速!参勤交代リターンズ」(2016年)、「空飛ぶタイヤ」(2018年)、「大コメ騒動」(2021年)といった作品を撮られています。

 プライムビデオでの平均評価は、★5中、★4となかなかの高評価でした。「久しぶりにスッキリする映画を見た」「元気が出る」「出演者の個性が際立っている」など、高評価レビューが多い印象を受けました。目立った酷評は、「時代劇をなめている」といったくらいで、ごく少数でした。

 時は江戸時代中期、8代将軍・吉宗(市川猿之助)の治世時。1万5千石の小藩・湯長谷藩(磐城国、現在の福島県)藩主である内藤政醇(佐々木蔵之介)一行は、参勤交代の帰路に着いていました。参勤が済んでホッとしていた折、老中・松平信祝(陣内孝則)から一通の命令書が届きます。その内容は、湯長谷藩が所有する金山の調査報告書に疑いがあるため、その釈明のために5日以内に江戸へ参勤せよ、といったものでした。本来、準備に半年かかり江戸へ8日かかる参勤ですから、湯長谷藩一行は大慌てです。もし間に合わなければ藩取り潰しになります。そんな時、内藤の目の前に戸隠流忍者・雲隠段蔵(伊原剛志)が現れ、報酬を渡す代わりに、道先案内人として、小長谷藩一行を無事に江戸へ送り届けることになりました。近道のため、山道を経由して江戸へ向かう小長谷藩一行でしたが、道中で謎の忍びの襲撃に遭います。なんとその忍びは松平信祝が遣わしたものでした。松平は金山を我が物にするため、わざと小長谷藩を取り潰そうとしていたのです・・・。以上ストーリーの前半をご紹介しました。

 本作は、参勤交代をモチーフにしたコメディ映画です。とにかくテンポが良く、最後まで飽きずに楽しむことができました。「忍びの案内で山道を通って江戸へ向かう」という設定は、本能寺の変の際に、徳川家康が伊賀・甲賀忍びの案内で、山道を通って堺から岡崎まで無事逃げ帰ったという、いわゆる「神君伊賀越え」と少し似ているような感じがしました。

 今回、小長谷藩を支える忍者として、雲隠段蔵(戸隠流忍者)が登場しますが、これは真田十勇士の一人「霧隠才蔵」と、牛呑み幻術でおなじみ「加藤段蔵」をもとに作られたキャラクターだと思われます。映画中では、彼らのような奇想天外な術を使うことはありませんが、類まれな身体能力を駆使して、松平の忍び軍団を瞬く間に倒していきます。

 特に映画の終盤において、小長谷藩一行が、松平信祝率いる大量の伊賀・甲賀・根来忍者軍団と闘うシーンは見物です。黒装束に身を包んだ大量の忍びが、躍動感ある動きで画面を埋め尽くします。もし現実でその場に遭遇していたら、確実にトラウマになっていたことでしょう。

 ちなみに江戸時代、幕府は「百人組」と呼ばれる鉄砲隊を抱えており、鉄砲の扱いに長けた伊賀・甲賀・根来忍びで構成されていました。本作に登場する大量の忍び軍団は、それをモチーフにしていると思われます。また8代将軍・吉宗は、「御庭蕃」という諜報組織を設置し、情報収集や江戸の治安維持に努めていたといいます。本作で彼らは出てきませんが、欲を言えばどこかで登場させてほしかったです。

 とにかく元気が出る映画ですので、気分が落ち込んだ時やリフレッシュしたい時に、気軽にご鑑賞頂ければと思います。

以上で今回のレビューを終わります。次回は「Elektra」(2005年、監督:ロブ・ボウマン)をレビューしたいと思います! (院生 郷原記)