国際忍者研究センター

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(学生通信)「李衛公問対」における、「用間は最下策である」について①(院生 リトクヨウ)

2021年07月16日

 みんなさん、こんにちは。私は現在「萬川集海」を読んでいますが、中に中国兵法書の内容が沢山引用されています。今回は「用間は最下策である」について、書きたいのですが、よろしくお願いします。
 まず「萬川集海」では、この引用された文について、
「忍者の使用は間違いなく上策である。李靖の言葉は愚将が忍者を使った場合の話である。確かに守には下策だが、名将にとっては上策である。その理由は、暗将は忍者の忠心とへつらいとの区別が出来ず、謀功の有無も知らず、さらに仁恩に薄く万計に疎く、大切な相図の打合せも中途半端にして相図の回数が多くなる。こんな調子だから運が良ければ忍者を用いて功をたてる事もあるが、忍者を使わない時は敗北するのが愚将である。このように愚将は忍者を使いこなす事が出来ないので下策となるわけである。」という説明が書かれている。
 実はいい説明だと思うが、実際の意味にも気になったので、いろいろ調べた。(参考文献は「『唐太宗李衛公問対今註今譯』曽振 註譯 臺灣商務印書館発行」である。)
 原文を見てみましょう。
太宗曰:「昔唐儉使突厥,卿因擊而敗之。人言卿以儉為死間,朕至今疑焉。如何?」
靖再拜曰:「臣與儉比肩事主,料儉說必不能柔服,故臣因縱兵擊之,所以去大惡不顧小義也。人謂以儉為死間,非臣之心。案按《孫子》,用間最為下策。臣嘗著論其末云:水能載舟,亦能覆舟。或用間以成功,或憑間而傾敗。若束髮事君,當朝正色,忠以盡節,信以竭誠,雖有善間,安可用乎?唐儉小義,陛下何疑?」
太宗曰:「誠哉!非仁義不能使間,此豈纖人所為乎?周公大義滅親,況一使人乎?灼無疑矣!」
 現代日本語で訳したら:
太宗「かつて唐倹を使者として突厥に遣わしたとき、そなたは好機と見て総攻撃をかけたが、唐倹を死間に使ったと言われた者も多い。そなたの真意を知りたい」
李靖「わたしは儉と一緒に陛下に努め、唐倹の弁舌では突厥を説き伏せることはできないと判断したから、機を狙い攻撃をしました。つまり大きな災いを除くために小さな義を捨てたのです。倹を死間に使うと多く言われましたが、それは私の本意ではないです。「孫子」の言う通り、用間は最下策であり、この用間編を読み、その末に『水は舟を浮かべるものであるが、同時に舟を転覆させもする。』と註をしました。
 はい、今回はここでお終わりしたいのですが、また次回お願いします。(院生 リトクヨウ記)