国際忍者研究センター

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(学生通信)映画レビュー㊼「女忍 KUNOICHI」<2011年、監督:千葉誠治>(院生 郷原匠)

2021年10月18日

 本日紹介する映画は、2011年に公開された「女忍 KUNOICHI」という映画です。監督は忍者映画監督としておなじみの千葉誠治氏です。過去のブログでも、千葉監督の作品は何個か取り上げておりますので、そちらについてもぜひご覧ください。※「抜け忍」(2009年)、「AVN エイリアンVSニンジャ」(2010年)、「忍者狩り」(2015年)。

プライムビデオでの平均評価は、★5中、★2つ半と低い評価でした。「アクションがすごい」「主演の武田梨奈さんがすごい」など、アクションシーンを評価する内容はいくつか見受けられましたが、「ラストがちょっと」「大学生サークルが作ったの!?」「ストレスが溜まる」といった酷評がほとんどだったので悲しい気持ちになりました。

 時は戦国期。伊賀と甲賀は覇権争いのためにしのぎを削っていました。甲賀のくノ一である如月(武田梨奈)は、仲間のくノ一達と共に、伊賀の下忍の捕虜になっていました。伊賀では、上忍のみが女性関係を持つことを許され、下忍達は他国に出て女性を探さなければなりませんでした。すなわち如月達は性奴隷としての未来が待っていたのです。くノ一達は、伊賀の下忍である霜月(虎牙光揮)と氷月(三元雅芸)に殴られ蹴られ、心と身体はすでにボロボロになっていました。その時、甲賀忍びである神無(佐藤雄一)の助けによって、くノ一達は下忍から解放されます。必死で逃げるくノ一達。霜月と氷月も必死で彼女達を追いかけます。そしてくノ一達の仲間のように思えた神無でしたが、彼も実は恐ろしい考えを秘めていたのです・・・。以上、ストーリーの前半をご紹介しました。

今回主演の武田梨奈さんは、空手の名人として知られており、今回の映画でもその身体能力を活かして、見応えある豪快なアクションを披露しています。千葉監督の作品は、ストーリー性はあまり重視しないけれども、質の高いアクションで見る者を惹き付けるという特徴があります。今回の作品も全くその通りでした。物語の後半で怒涛のアクションシーンが続きますが、武田さんの類まれな身体能力を活かした体術や殺陣演技を存分に堪能することができました。

後半部分がすごい分、前半部分はなんともいえない状態になってしまっています。不満を寄せる方々の多くが、この前半部分でした。起伏のない描写が30分以上続き、「これ必要?」という箇所も多くあったことから、私自身も少し眠くなってしまいました。もう少し脚本を工夫して、前半にもいくつかアクションシーンを挿入すべきだと思います。

 ちなみに今回の物語もそうでしたが、「伊賀VS甲賀」という構図は、多くの忍者映画で用いられています。史実としてはむしろ逆で、対立関係はなくむしろ協力関係にあったといわれています。伊賀と甲賀の境で互いの忍びが議論して物事を決めたり、婚姻関係もあったりと、様々な面で交流がありました。しかしながら対立関係にした方が、やはり物語としては面白いので、今後もこの構図は変わることなく用いられるでしょう。

以上で今回のレビューを終わります。次回は「NINJA」(2009年、監督:アイザック・フロレンティーン)をレビューしたいと思います!(院生 郷原記)