国際忍者研究センター

三重大学では、伊賀地域の発展のために、
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(学生通信)映画レビュー㊿「忍ジャニ参上!未来への戦い」<2014年、監督:井上昌典>(院生 郷原匠)

2021年11月12日

 本日紹介する映画は、2014年に公開された「忍ジャニ参上!未来への戦い」という映画です。監督の井上昌典氏は、他に「Ninja Vixens:Virgin Nightmares」(2006年)というホラー系忍者映画を撮られているそうです。忍者×ホラーの組み合わせは気になるので、また機会を見つけてレビューしたいと思います。

 今回、プライムビデオにはなかったので、近くのGEOでDVDを借りて鑑賞しました。ネット上の評価としては、「アイドルと時代劇の貴重な組み合わせ」「ジャニーズファンは楽しめる」「関西のコミカルさが面白い」など、高評価のレビューが多く残されていました。これといった酷評はなかったので安心しました。

 時は江戸時代。大和国(現在の奈良県)の郡山新田藩では、カザハ(重岡大毅)、フウト(小瀧望)、ホウジ(平野紫耀)、キスケ(向井康二)、ソラ(神山智洋)という5人の忍者達が生活していました。昼間はそれぞれ仕事をして、夜に忍者活動を行います。しかし世の中が平和になるにつれて忍者の必要性もなくなり、5人はついに忍者を解雇されてしまいました。5人はこの危機をなんとか脱出するために、藩主・本田政利(渋谷天外)に仕官し、町で起こる数々の事件を解決し始めます。そんな5人は徐々に町の人々から英雄扱いされるようになります。これに対してフウトだけは、あまり良いと思っていませんでした。そんなある日、カザハ達は任務のために山中を歩いていると、郡山新田藩に仕える江戸出身の忍者、ハヤテ(森本慎太郎)とカゲマル(京本大我)に出会います。ライバル関係にあった彼らは、その場で決闘を始めます。その時、郡山新田藩の本家である大和郡山藩の大名行列に遭遇します。しかしどこか様子がおかしいのです。彼らはそこで、暗殺された藩主を発見します。しかも運の悪いことに、郡山新田藩の奉行衆が偶然通りかかり、その場にいたカザハ達は暗殺容疑で捕まり、処刑場へと送られてしまいます。果たして彼らは一体どうなってしまうのでしょうか・・・。以上、ストーリーの前半をご紹介しました。

 本作は、関西ジャニーズのアイドルが主演の忍者映画であり、高い身体能力を活かしたアクションと軽快なコメディが特徴の映画です。ストーリーも分かりやすくて、老若男女楽しめる映画であると感じました。特にジャニーズアイドルは、若い女性達から大人気の存在なので、この映画をきっかけに、忍者に興味を持つ若い女性が増えてほしいと思います。

 今回は、大和国の「郡山新田藩」が舞台になっています。郡山新田藩は大和郡山藩の支藩であり、1639年から1679年の40年間存続しました。藩主は代々「本多家」が務めました。ちなみに本家の大和郡山藩については、忍者とわずかながら関係がある藩として知られています。享保8年(1723)、藩主・本多喜十郎が急逝したことで本多家は改易となり、本多家に仕えていた藩士達が蜂起するのではないかとの噂が流れました。それに対して尾張藩(現在の愛知県)が、「甲賀五人」という甲賀忍びを大和郡山城下に潜入させ、情報収集を行わせたことが分かっています。今回の映画に甲賀五人は登場しませんが、次回作があれば期待したいと思います。

 映画中では、仲間内で「名を知られたいカザハ」と「名を知られたくないフウト」の対立が見られますが、史実に照らし合わせると、本来の忍者に近いのはフウトの考え方です。「名を知られずに任務を遂行することが忍者の道である」といったことを記した忍術書も存在することから、本作に登場する忍者達は、正直なところあまり忍者らしくありません。

 ちなみにジャニーズには、過去に「忍者」というグループが存在し、「お祭り忍者」という歌をリリースしています。現在でも、ジャニーズJr.で構成された「少年忍者」というグループが活動しています。高い身体能力と甘いマスクが持ち味のジャニーズアイドルは、日本のクールコンテンツである忍者と結びつきやすいのでしょうか。「忍者×ジャニーズ」のコラボは話題性があり、多くのファン層を獲得できる良いチャンスなので、これからもどんどん新しい作品を生み出してほしいと願っています。

 以上で今回のレビューを終わります。次回から20世紀に制作された忍者映画をレビューしていきます。記念すべき第1回目は「燃えよNINJA」(1981年、監督:メナヘム・ゴーラン)をレビューしたいと思います!(院生 郷原記)