国際忍者研究センター

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(学生通信)映画レビュー53「続・忍びの者」<1963年、監督:山本薩夫>(院生 郷原匠)

2021年12月06日

本日紹介する映画は、1963年に公開された「続・忍びの者」という映画です。映画「忍びの者」シリーズ第2作目であり、前回ご紹介した「忍びの者」の続編です。監督は前回に引き続き山本薩夫氏です。「白い巨塔」(1966年)や「にっぽん泥棒物語」(1965年)、「華麗なる一族」(1974)など、数多くの名作を世に送り出した日本の名監督です。

プライムビデオの平均評価は、★5中、★4と、高い評価でした。レビューについても、「いやあ、なかなかのもんでした!」「いいね」「山本薩夫の魅力の一作」といったように、褒め称えるレビューばかりでした。驚くことに酷評は全くありませんでした。

 天正伊賀の乱で生き残った石川五右衛門(市川雷蔵)は、妻のマキ(藤村志保)、息子の五平と共に、幸せに暮らしていました。しかしその裏では、織田信長(若山富三郎)が、生き残りの伊賀忍者を捕らえて処刑する「忍者狩り」を行っていました。ついにそれは五右衛門の下にもやって来ました。信長の家臣が五右衛門の家を襲い、五右衛門とマキは命からがら逃げだしたものの、五平は殺されてしまいます。五右衛門は、愛する息子を殺した信長への恨みを晴らすため、マキの故郷である雑賀(現在の和歌山県)に身を隠し、復讐の機会をうかがっていました。そんなある日、伊賀の抜け忍で、現在は徳川家康に仕えている服部半蔵(伊達三郎)が、五右衛門の前に姿を現します。半蔵によると、信長に復讐するためには、信長に恨みを持つ家臣・明智光秀(山村總)に近づくのが良いということでした。そこで五右衛門は光秀の家臣になることを決意します。そしてついに光秀は、本能寺にいる信長に反旗を翻すのです・・・。以上ストーリーの前半をご紹介しました。

映画「忍びの者」シリーズは、1960年11月から1962年5月まで『赤旗』という雑誌に連載された、村山知義『忍びの者』という小説を原作としています。権力者に翻弄される下忍達の悲哀を描いていることから、「資本家に搾取される労働者」を暗示しているとして、当時の左翼的思想に大きな影響を与えました。

本作品は、以前ご紹介した「忍びの者」(1962年)の続きにあたる作品であり、主人公は前回に引き続き、石川五右衛門です。舞台は、天正伊賀の乱から本能寺の変、そして秀吉による紀州征伐を描いています。それら日本史の大事件の裏で、五右衛門の暗躍や苦悩をリアル感たっぷりに描いていることで、前作に全く劣らない質に仕上がっています。数ある作品の中で、「続編」は酷評されることが多いですが、本作品は大成功しています。むしろ前作よりも面白いと感じる人は多いと思います。

ちなみに三大忍術書のひとつ『万川集海』において、織田信長は「饗談」という忍者集団を抱えていたとされています。ただ具体的な活躍が分かっていないので、本当に存在していたかどうかは不明です。

また秀吉は、紀州攻めの際に、雑賀衆が籠城していた太田城を水攻めするために堤を築かせ、その工事に甲賀忍者が動員されました。しかし工事に遅れが生じたため、秀吉は甲賀忍び20家に対して、領地没収と居住地追放を行っています。これは「甲賀ゆれ」と呼ばれ、甲賀地域では悲劇の歴史として知られています。これらの事件については、もちろん本作では触れられていませんが、「権力者に翻弄される下忍達の悲哀」というテーマでは共通しているので、スピンオフ作品にしても良いと思います。

話がずれましたが、本作品も前作に劣らない内容となっているので、「忍びの者」(1962年)とセットでご鑑賞下さい。きっと満足できると思います。

 以上で今回のレビューを終わります。次回は「新・忍びの者」(1963年、監督:森一生)をレビューしたいと思います!(院生 郷原記)