国際忍者研究センター

三重大学では、伊賀地域の発展のために、
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(エッセイ)大阪古典会出品の「甲賀者由緒書」(吉丸雄哉)

2019年07月19日

 令和元年6月の大阪古典会主催の古典籍展観入札会には忍者・忍術関係の文書や書籍が多く出品された。長く東京にいたため大阪古典会の『古典籍展観入札会目録』をほとんど気にしていなかったのだが、東京ではついぞ見たことがないので驚いた。大阪だと大阪古典会会員のK書店(間違えていたらいけないのでアルファベットにしておく)が忍術書をよく扱うらしいので、それが理由かもしれない。うまい具合に展観日に行くことができたので、大学院生二人と一緒に当該の品々を確認してきた。
 優品だったのは「甲賀者由緒書」一巻で寛文七年(1664)甲賀郡百姓惣代芥川甚五兵衛の署名がある。甲賀古士の歴史を鵜殿攻め、神君伊賀越、関ヶ原合戦、大坂の陣、島原の乱など順々に記したものである。展観の場でざっと見ただけなので外れているかもしれないが「寛文七年甲賀古士訴状」(『甲賀郡誌』大正15所収)などに見られる甲賀古士の家々に伝わってきた一種の由緒書だろう。他に同様の文章があるのはわかっているが、実物が見られたのは満足した。
 その他いくつか忍術書を見たがなかにはごく最近写したのではないかと思われるものもあり、やはり現物を見ないとわからない情報が多いと思った次第である。(吉丸記)