国際忍者研究センター

三重大学では、伊賀地域の発展のために、
忍者の歴史や文化を研究し、その成果を発信しています。

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(学生通信)S法委員会と拷問(院生 仙空)

2020年12月22日

こんにちは、仙空です。
 今回のお話は少しグロいかもしれません。そしてヲタク目線の勝手な妄想もいっぱいです。苦手な方はお気を付けください。私は忍たま乱太郎の立花仙蔵が大好きなのですが、彼は作法委員会の委員長を務めています。忍術学園には保健委員会、用具委員会、火薬委員会、生物委員会等9つの委員会が存在しています。保健委員会はけが人・病人の手当てや薬づくり、用具委員会は建物・武器の修理や管理、生物委員会は学園で飼育している虫や生き物のお世話等学園の運営に必要不可欠な役割を担っています。そんな中、少し異質なのが作法委員会です。作法委員会は戦国時代の合戦の作法を研究する委員会です。首実検や水軍の音声・合図の作法等を勉強しているようです。他の委員会と違い、ないとすぐに困るような委員会ではないと思います。なので、委員会の歴史は浅く、アニメの12期で新設され、メンバーが選ばれています。

 この作法委員会、忍たまファンの間ではS法委員会とも呼ばれています。委員長の六年い組立花仙蔵は学園一優秀でクール、計算高く、話し方は丁寧ですが高圧的です。四年い組綾部喜八郎は超マイペースで、天才トラパーと異名をとるほどの仕掛け罠の名人。三年は組浦風籐内はファンからは作法の良心と呼ばれ、Sっ気は作法委員会で一番弱めですが、予習復習の鬼で、予習と称して学園を破壊する無邪気な問題児です。一年い組黒角伝七はプライドが高い優等生で、は組の生徒をよくディスっています。一年は組笹山兵太夫はからくりが大好きな毒舌家。綾部喜八郎と協力して凶悪な罠も作ります。メンバーは以上の5名ですが、Sっ気が強く、賢い生徒達で構成されています(忍たまファンの間では、い組=優秀というイメージが定着しています。任務が研究だからなのか、作法委員会はい組率が最も高い委員会です)。

 そのためか、作法委員会は拷問もしていそう、という声がファンの中ではあります。忍たま乱太郎は子ども向けの作品なので、拷問なんてもちろん公式の委員会設定には出てきません。けれど、もし拷問がいずれかの委員会の任務としてあるとしたら、確かに作法委員会かな、と私も思います。作法委員はS気質なので人を痛めつけることへの抵抗は他の委員会より少なそうだし、首実検の練習をしているなら死体にも慣れていそうだし(公式では生首フィギュアを使っていますが、室町後期に実物に近いフィギュアは作れないですよね…?子ども向けフィルターがかかってなければ、戦場から首を拾ってきているのではないかと妄想しています)、頭が良いから尋問もできそう。捕らえた曲者を作法委員が拷問にかけ、相手の生死のコントロールのために保健委員も立ち会っていそう…と妄想が膨らみます。

 戦国時代、戦になると敵も味方も忍びを使って情報収集や攪乱、放火等をすることが多かったようです。もし忍びが会敵した場合、その場で殺される以外にも、捕らえられ、拷問にかけられることも少なくなかったのではないでしょうか。忍びはどんな拷問を受けたのか、そもそも日本にはどんな拷問方法があったのか興味が沸き、名和弓雄氏が書かれた改訂新版『拷問刑罰史』(2012)を読みました。拷問について書かれている本なので、グロいんだろうなと覚悟はしていましたが、大分きつかったです。読んでいて気持ち悪くなるを通り越して、視界が霞んできました。本を読んで、その内容のせいで視界が霞むなんて初めての経験でしたね。残酷さに気を失う一歩手前だったのでしょうか笑。生きている人間に対してする行為なのかこれは…と疑いたくなるものばかりでした。しかも江戸時代、公刑として拷問が存在していたなんて…。拷問が廃止されて本当に良かったです。

 そんなエグい話ばかりの本でしたが、思わず笑ってしまった箇所がありました。主に盗みをはたらいた罪人に対して課せられる処罰の一つに入墨があったようですが、藩や奉行所によって入れ方が異なり、どこで罪を犯したか分かるようになっていました。以下、改訂新版『拷問刑罰史』193頁からの引用です。
「芸州広島では初犯は額に『一』の字、再犯になると『一』の処に『ノ』を加え、三犯は『╰』と『﹅』を加えて『犬』の字にする。」
 なんとなんと額に犬!ですよΣ(゚口゚;)//私は犬好きなので、わんこをそんなことに使うなんて可哀相という気持ちもうっすらありますが、笑いが勝ちましたね。一生額に犬だなんて、犯罪抑止効果はかなり高そうですよね。犬繋がりでもう一つ、少し笑ってしまった「犬払い」という追放刑もあります。ご興味ある方は名和氏の本を読んでみてください。

 それから、この本を読んで長年の勘違いに気づきました。それは「引廻し」についてです。今までに市中引廻しという言葉は聞いたことがあったのですが、罪人を縄で縛り、馬や牛か役人にその縄を引かせ、罪人は歩けずに地面に体をつけながら、引きずり回される、というものをイメージしていました。けどそうではなかったのですね。引廻しは火あぶり刑と磔刑の附加刑で、囚人は両手を後ろ手に縛り上げられたうえで、裸馬に乗せられるそうです(同書154頁参照)。囚人を痛めつけるための刑ではなく、罪を犯し死刑に処せられる囚人を一般大衆に見せしめとして見物させ、防犯の一助としたようです。この部分を読んだ時は、あれ?思っていたのと違う~本当かな~と疑いました(失礼ッΣ)。けど名和氏のこの本を読んだことを山田先生にお話ししたところ、明治大学の博物館に刑事部門の展示があり、名和氏がコレクションを納めていると教えて頂きました。私は関東に住んでいるので、教えてもらって割とすぐに明治大学博物館に見に行きました。すると、そこの展示にも市中引廻しの絵と説明がありましたが、囚人を馬にのせると書かれていました。そしていくつかの辞書で調べてみてもやはり囚人は馬に乗せられています。はい、完全なる私の勘違いがここでようやく正されました。

 忍びと拷問、縁遠い話ではないと思います。知って気持ちの良い内容ではないですが、関心のある方は本を読んでみたり、関東の方は明治大学博物館に足を運ばれてみても良いかもしれません。
それではこの辺りでサラダバー!
(忍たまに登場する稗田八方斎ネタです。私ほぼ毎日言ってます)院生 仙空記