国際忍者研究センター

三重大学では、伊賀地域の発展のために、
忍者の歴史や文化を研究し、その成果を発信しています。

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(学生通信)映画レビュー㉘「下忍 赤い影」<2019年、監督:山口義高>(院生 郷原匠)

2021年01月26日

 本日紹介する映画は、2019年に公開された「下忍 赤い影」という映画です。監督の山口義高氏は、「アルカナ」(2013年)や「猫侍」(2014年)といった作品で知られています。

 プライムビデオによる平均評価は、★5中、★3つ半と、まあまあの評価でした。レビューは4件と少ないですが、「思ったより楽しめた」「生身のアクションが最高!」のような肯定的な感想で多く占められており、酷評については、「面白くない」という意見があるだけでした。

 時は幕末、倒幕への動きが高まる中で、もはや忍者と呼ばれるものは時代遅れとなっていました。そんな中、伊賀の下忍の末裔である竜(寛一郎)は、抜け忍として、伊賀を離れて江戸で暮らしていました。そんなある日、博打のもとに居合わせた勝海舟(津田寛治)によってその出自を見抜かれ、ある密命を授かります。それは江戸の旗本に嫁がせた薩摩藩の静(山口まゆ)という姫を奪還して、国元へ送り戻せというものでした。なんとか奪還できた竜は薩摩国へと向かうのですが、薩摩藩は琉球武術の使い手である尚(結木滉星)を送り込み、静を取り返そうとします。果たして竜は無事に静を薩摩国へ返すことができるのでしょうか・・・。以上ストーリーのあらすじをご紹介しました。本作の主役を務めたのは寛一郎さんという方で、彼の父親は佐藤浩市さん、祖父は三國連太郎さんという、エリート俳優の血筋を引く人物です。やはり演技力も高く、顔も端正であったので、映画の中でもひときわ存在感をはなっていました。今後の出演作品も楽しみです。

 本作品は全体的に哀愁漂う感じになっています。江戸から明治へと時代が変わる大転換期において、不要になった忍びのなんともいえない悲しげな様子がひしひしと伝わってきます。忍者映画においては、大体が戦国時代の忍びについて描かれるので、このように幕末の忍びを描いた作品は珍しく、とても貴重な作品だと感じています。

 幕末期の忍びをモチーフにした作品といえば、大柿ロクロウ氏による漫画『シノビノ』が有名で、本作品では、沢村甚三郎保祐という実在の忍びが主人公となっています。彼はペリー艦隊の探索任務を行ったとされ、実際の史料にもその記録が残されています。今回の映画はそれとは全く関係ありませんが、どうせ幕末期を描くなら、沢村甚三郎保祐を出演させても良いのではないかと個人的には思いました。

 ちなみに本作品から一か月遅れて、「下忍 青い影」という映画が上映されています。これは本作品にも登場する、琉球武術の達人・尚(結木滉星)を主人公とした内容になっています。話はずれますが、琉球(沖縄県)に忍者は存在したのでしょうか。そのことについて個人的にとても興味を持っているので、もしそのような史料がありましたら、ぜひとも国際忍者研究センターにご連絡頂ければと思います。

 以上で今回のレビューを終わります。次回は「SHINOBI」(2005年、監督:下山天)をレビューしたいと思います!(院生 郷原記)